容姿・経歴・その他メモ

　大切な人に目の前で死なれた。
投獄された（犯罪に巻き込まれて）
雪国の出身

　アルショニア女王国の貴族の一員として生まれたエルフ。
女性が政治の手綱を握るこの国の貴族の一員である彼女は、高貴なるものの義務を果たすべく自己研鑽に励み文武両道を正道に進んでいた。
昼は森にて供回り（という名の雇われ護衛）と一緒に間引きを兼ねた狩猟を行う一方、
夜は隣国や周辺貴族との結びつきを強めるために、舞踏会や祝賀会で女王国貴族やキングスフォール評議員等と政治的交流を行っていた。
護衛有りとはいえ命を失うかもしれない実戦、言葉一つで簡単に崩れる信頼の綱渡りという政治的駆け引き。
心身ともに圧迫される環境下であったが、それでも高い誇りと、裏表から支えてくれる家族のおかげで恙なくこなしていた。
外見も中身も立派な親に愛され、武において教練役の引退冒険者に十分冒険者としてでも活動できるとの太鼓判を押され、素敵な趣味（ワインソムリエ）も出来、互いに相思相愛な婚約者も若いうちに決まり、順風満帆のエルフ生と言えた。
……４０歳までは。


『我々は解放戦線である！！間違っている現政府を打倒し、正しい政治を我らの手で築くのだ！！』
クーデター、アルショニア女王国始めての出来事であった。
グランティン大鉄橋が大爆発によって破断され、声明を出されてすぐに、貴族の家に武装集団、そして蛮族がなだれ込んできた。
家が燃え、護衛は殺され、民草は家の中で自分たちには何事も起きないようにライフォスに祈り願った。
彼女の家も例外ではなかった。
何も分かっていない彼女の前で、乱暴に扉が蹴破られる。
家には婚約者も訪れており、彼女の誕生日をささやかに祝っていた時であった。
「お前たちは間違った政府に協力し、誤った政治を民衆に押し付けていた犯罪者であり……」
言葉のなにもかもが彼女には理解できなかった。
実際に喚きたてるクーデター活動者に政治というものがどれだけ理解できていたであろうか。
だが確かな事実として、襲撃してきた者たちは完全武装しており、家の中で武装しているものなど既に殺された護衛くらいのものだった。
それでも貴族は名ばかりではないと証明するように、両親はアポートによって魔法発動体を呼び寄せ、婚約者はなけなしの勇気を振り絞り鍛えてもいないこぶしを握り締めて彼女の前に立った。
だが鍛えていないものの拳がいったい何の役に立つだろう。
いかな魔導士であっても、前衛のいない状態で、どれだけの時間を稼げるだろう。
結果として、彼女の目の前で赤い華が咲き、大切だったものは冷たくなっていった。
呆然と崩れ落ちる彼女の手には、懸命に鍛えた銃はなく、長年森を共に駆けた愛馬もなく、言葉を発しても襲撃者の耳には届かなかった。
鍛えていないこぶしにて抵抗した彼女が、婚約者と道を分かった理由はシンプルだった。
襲撃してきたクーデター活動者たちは、蛮族の協力で武装蜂起に成功しており、彼らに対価を払わなければいけなかったのだ。
襲撃者たちは彼女を「犯罪者の娘であり、既に誤った政治に手を貸す犯罪者であり、崇高な我らの使命に抵抗した重罪人である」として、蛮族への領域へ送られる者を集めた汚らしい牢屋へと閉じ込めた。
彼女は襲撃に対しては無知であったが、この後どうなるかは理解していた。


　結論から言うと、彼女は無事なまま牢屋を出ることが出来た。
彼女が嬲り者にされる前日、キングスフォールで依頼を受けた冒険者たちが逃亡に成功した女王を保護し、また別の冒険者たちがクーデターに力を貸した蛮族を討伐することで、紅の牙女騎士団を始めとする本来の兵士たちがクーデター活動者たちを追い出し、倒すことに成功したのである。
だが、もう国に彼女の居場所はなかった。
家はない、大切な人は死んでいった、牢屋に入っていた者は誰が嬲り者にされ、誰が純潔を保ったのか定かではないため、牢屋に入れられていた者は皆、男からも女からも色眼鏡で見られるようになった。
そんな視線に負けず、復興に力を尽くすという道もあったが、失意の彼女にそこまでして国に尽くす心はなかった。
女王に貴族としての権利などを返納し、此度手柄を立てた者への褒賞としてほしいと言い、知り合いや交流があったものに別れを告げると、再建途中のグランティン大鉄橋を渡り、鉄道に乗って、全く別の場所に旅立っていった。


　だが彼女はまだ知らない。
その旅だった先でも、今度は触手と催眠が待ち受けていることを。

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