蛮族領のあるバジリスクの元に生まれる。
そのバジリスクにとっても彼女の存在は意図した物ではなかったが、生かしておけば何かの役に立つかもしれないと考えた結果、最低限の干渉で育てていった。

そうして数年後、その考えはピタりと的中する事になる。

少女はそのバジリスクに…父親に酷く似ていた。
唯一右目だけが母体であった人間の雰囲気を受け継いでいたが、右目さえ隠してしまえば幼少期の父親と瓜二つ。
その事を面白がったバジリスクは、何かに使えないかと思考を巡らせた。

そうして案として躍り出たのが、“影武者”だ。
バジリスクは、その一帯ではかなり力を持つ存在だった。しかし、力のせいで発生する面倒も少なくはない。彼は立場を上手く利用する一方で、発生する面倒を酷く煩わしく思っていた。
そこで、彼は自分に瓜二つな彼女に面倒事の代行をさせ、自身が趣味に没頭する為の『自身の影武者』にしようと考えた。

そこから彼は、『もう一人の自分』を作る事に時間を注いだ。
口調を仕込み、立ち振る舞いを教育し、徹底して自身を模倣させる。

順調に計画は進み、彼女の外面が殆ど父親と瓜二つまでに近づいて来ていた時。彼女を不幸が襲う。
バジリスクが、他の蛮族との争いに敗れ討たれたのだ。

支配していた物や部下は奪われてしまい、彼女も身柄を抑えられる事となる。
そうして、彼女の短い人生に幕が引かれようとした…の、だが。
幸運な事に、彼女は敵対していた蛮族の首領に見逃される事となる。
その蛮族が何を考えていたかは分からない。弱者に興味がなかったのかもしれないし、あるいは哀れんだのかもしれない。

その後、彼女は宛もなく彷徨い歩き、やがて人族の領域へと逃げ込んだ。
現在は生活の為に冒険者を始め、新米ながら少しずつ仕事をこなしている。

・影武者としての価値観と自身の力のなさでのギャップからくる不安さから、自己意識が薄い。挙動不審さや他人と話す時の気弱さはその『自分という存在の不確かさ』から来る物。
・万一にも逆らわれないように、戦闘能力が与えられる事はなかった。グラップラー技能は独学。
・生物と目を合わせられないのは、仲の良かったペットを石にしてしまった事があり、それをトラウマに思っている為。

「…ｱｯ…えと…カトラ…ﾃﾞｽ…」
「…ぼ、冒険者…やってます。新米です…ｹﾄﾞ…」
「…そ、その拳闘士としてと学者としてなら動けると、思います。…ｽｺｼﾀﾞｹ…」
「…よ…よろしく、お願いします」
「………」

とってもコミュ弱なバジリスクウィークリングのグラップラー。話してるうちに段々小声になっていく。
ビルドは全力グラップラー的な感じ