私には才能がありません。
宮廷魔導師の家に生まれた私は、ずっと魔導師になるための勉強をさせられました。
お父さんとお母さんは、私のためにたくさんの本をくれたり、直接魔法を教えてくれたりしたので、私もお父さんとお母さんみたいな宮廷魔導師になれるんだと思ってたました。
…でも、いくら勉強しても、いくら訓練しても、私に真語魔法と操霊魔法は使えませんでした。だから、私はお父さんとお母さんに見捨てられて、街の中に放り出されました。今頃、最初から娘なんて居なかったことにされていると思います。

お父さんとお母さんと離れ離れになって悲しくて、これからどうしたら良いのか分からなくて、一人で泣いていた私を拾ってくれたのが、今のお母さんです。
お母さんはすごいです。真語魔法と操霊魔法をたくさん使えて、たくさんのことを知っていて、仲の良いお友達もいて…私にないものを全部持っていました。何より、真語魔法も操霊魔法も使えないどころか…召異魔法なんて怖いものに才能があった私を、本当の娘みたいに育ててくれたんです。

私はそんなお母さんが大好きで…大好きだけど、羨ましくて、嫉妬しちゃう方が大きいです。お母さんみたいな才能があったらよかったのに、ずるいなぁ…なんて今も思います。
少しでもお母さんに近づきたくて、口調を変えてみたり、自分の呼び方を僕にしたりして、出来る限り真似しました。でもまだ慣れなくてカタコトになるし、頭が良くなるわけでもなかったです。

私にお母さんの血は1ミリも流れてません。もちろん、お母さんみたいな才能もありません。だからこそ、冒険者になってちゃんと“凄いお母さんの娘“になりたいと思ったのです。…あ、こんな気持ち知られたくないからお母さんにはナイショですよ！…お母さんみたいな天才には、とっくに気付かれてるかもしれないですけど。

【経歴】目標としている人がいる(いた)、絶対に知られたくない秘密がある、育ての親に拾われた
【冒険に出た理由】目指すべき場所がある
【信条】運命/否定、身分/肯定
【矜持/執着】知識の獲得はなにものにも優先する