道なき空をゆく飛行船。どこを目指していたのかは知らない。何を載せて、誰が乗っていたのかもちょっとしか覚えていない。

空を渡り続けていた私の両親は、きっとすごい人だったのだろう。荷を運ぶ商人なのか、それを守る冒険者なのか、それでもないのか。

いつものように街に着いて、しばらく滞在して、新しい荷物を積んで、また旅に出る。そんな日常が、繰り返されると思っていた。


空が堕ちてくる時、空から落ちるとき、
空を霧のように覆う藍色と、その中で浮き立つような純白を見た気がした。


それからはリルドラケンの集落で育った。

拾われてから種族を聞かれてリルドラケンだと答えれば、あぁ君みたいな見た目たまにいるよねと言われたのは今でも覚えている。

あれ以来、私はずっと病気のようなものに掛かり続けている。

症状は焦燥感や心拍数が上がったりすると酷くなる。

酷くなると…頭ががんがんして、咳が出て、何かを壊して回りたい衝動に駆られる。

厄介だけれど、もう衝動には慣れたものでうまく付き合えるようになっている。


集落ではずっと、空を探していた。空を探していたら、血だらけの猫っぽいお姉さんを拾った。

猫のヒトからは色んな話を聞いた。冒険だったり、いろんな国のことだったり。

猫のヒトは怪我が治るとすぐに去ってしまったけれど、一緒に冒険に行くかって聞かれた。

その時は歳もだし、用意もだし、なにより危険なところに行くからって、曖昧に終わっちゃったけれど。

空を探すために、冒険に出るという選択肢が私の中に生まれた。

空のための魔法を覚えたかったのだけど、あの日以来妙に妖精が寄ってくる。

来るだけならともかく、何故かぶつかってきたりと微妙に嫌われている。嫌いなら離れればいいのに……。

特に風のがよく寄ってくる。空に近そうだから助けてくれるのはいいのだけど、自分にとっては痛いので複雑。

……もしかして弱点だから寄ってきてる？