容姿・経歴・その他メモ

常夜のカノンはつい5年前までは通り名のない...もとより、文明に触れる事の無いただのカノンであった。

家族と暮らしていた遺跡が野盗に発見された。
凶刃は最初に光を奪ったが、それ以上は何も見ていないのでわからない。
陽光、焔、魔法、希望。闇の中では光は元より実存していたかすらわからない。それでも肌に刺さる叫び声が、覆いこむ石畳の冷たさが、舐る生温い蛭のような気食の悪さが"私は世界にいる"と実感させてくる。

その子供が心を虚無の中に沈めたのは、仕方のない事だった。


それからどれ程経ったか。知らないし解らない。マリヤの放った魔法は、少年を久しい光で照らし、心に纏わり付いたどす黒い虚無は灼けてしまった。

久しく泣いた。めちゃくちゃになった感情の濁流がどこへ流れ着いたかは覚えていない。だがきっと、あの時飲まされたスープの味を忘れる事は無いだろう。

それから闇におびえたレプラカーンは棚から落ちてきた奇跡にしがみついた。
ランタンの火は決して尽きぬよう手入れし、魔法の研鑽は常に怠らず、貪欲に光を追い求め続けた。
すこし着いて回ればマリヤは冒険者という物であるらしいことが分かった。

それは、未知に怯えず切り開く者。それは、闇に怯まず希望を灯す者。それは、光から足を踏み出せない臆病者に、路を標す勇敢な者。
それは、『私』の求める理想の『私』。

少年がその標を目指すのは道理であった。

それからの行動は想像に難くない。知識を詰め込めるだけ詰め込み。学校へ、技術の実用されている場面へ、国内の端へ端へ"PC名"を引きずり回して知識を飲み込んだ。
遺跡の中で壁画を眺め、読めない文字をなぞり、内向的だが好奇心の旺盛な子供は、すぐに山もりの餌が虜となった。

学校を卒業までは苦ではなかった。問題があったのは冒険者となった後だ。
光を発生させる魔法を習得していなかった。目の前に吊るされた餌に涎の止まらなくなっていたカノンは当初の予定を忘れていた。

『いつか真っ暗な夜もわかんなくなっちゃうような...でっかい光を灯すんです！』
常にし続けてきた宣言と、"明星"という2つ名(自称)が仇を成した。

声だけは立派な威勢のいいレプラカーンがいるらしい。付近のモノにはすぐに伝わり、火一つ灯せない、あいつは"常夜"だ。と皮肉られるようになった。

それでもレプラカーンは諦めない。今日も光は出せないができる事は増えていく。今日も光を求めて闇の中を歩いていく。

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