容姿・経歴・その他メモ

身体に傷跡がある
命を助けられたことがある
大きな嘘をついている

見聞広めるため

小さな村に生まれ、忌み子として嫌われていた。それも仕方のないこと、生まれる際に母親の体を傷つけそのまま死に至らしめてしまったのだから。生まれてすぐに親にもぞんざいに扱われ、同年代の子供からは当たり前のように虐められた。親殺し、親殺しと何度も謗られた。それは仕方のないことで、誰にもどうすることもできなかった。
しかし、祖父はいつも自分の味方だった。かつて冒険者として名声を上げていた祖父は、そんなくだらない偏見などを気にすることのないよう自分に言い、そしていつか冒険者になるのだとそう言ってくれた。それを疑うこともなく信じて日々を生きていた。なぜなら少年の味方は祖父だけであり、優しい言葉をかけてくれるのも傷を手当てしてくれるのも祖父だけだったからだ。そしてそんな祖父を誇りに思っていた。

ある日から、祖父は自分にある業を教えてくれた。
穢れやこの世界の理から大きく外れた存在、名を魔神と総称される。それを使役する、恐ろしくも強い召異魔術師の存在を。
ツェーンは恐怖した。だが同時に、そんな存在になれれば自分もこんな風に一方的に虐められるのではなく、強くなりみんなに認められるような存在になれるのではないのかと。そう期待せずにはいられなかった。とても淡く、それ以上に無謀な期待だった。魔神使いはその強さ、性質ゆえに迫害の対象であることも知らずに、無謀に無意味に目指した。
祖父を師と仰いで毎日教えを乞うた。少しずつだが教えてくれて、それをめげずに毎日覚え聞いていた。

しかし、ナイトメアではない祖父には終わりがあった。

祖父が死んだ日は生まれて初めて泣いた日だった。祖父の墓にすがりつき、穢れると親に引き剥がされるのに心がとても痛くなった。
親にしつこく迫って、祖父の遺品を整理させてもらった。祖父は熱心な冒険者で、様々な資料や遺物を残していた。多くは売ってしまったが、その中でも不思議な形をした宝石だけは気になってしまって、なんとなく持ち帰った。

その夜のことだった。
月がきれいで、少し涼しい風の吹く夏の夜だった。
誰かの喋る声で目を覚ました。
やかましい、うるさい。眠れない。話しかけるな。

────誰だ？

そうして振り向くと、羽根の生えた猫がいた。祖父の宝石に宿っていたのだろうか、宝石を遊ぶように転がしながら、至極つまらなさそうにこちらに話しかける猫だった。名を、｜扉の小魔《ゲートインプ》というのだという。名前はお前が決めろ、と。お前に仕えてやるから召異術士になれと、そうのたまってきたのだ。

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