アリス=ユトレヒトはギフテッドである。そりゃもうどげんかせんといかんというくらいとギフテッドである。すなわち天才であった。いや、天才という言葉でも彼女の頭脳では足りないだろう。
その頭脳は本物であった。ただし、それは傲慢に繋がった。自己を驕り、他者を軽んずるようになったアリスは次第に周囲から疎まれるようになった。だが、それすらにも酔いしれていた。他者の嫉妬、それは自身の知能の高さの証明に他ならなかったからだ。
だが、彼女にはそれ以外にも欠点があった。彼女は町から出たことがなかった。外世界の危険も、アクシデントも、そして見知らぬ人との出会いも何も経験したことがなかった。要は彼女は頭でっかちなのだ。
周囲が5歳になれば町を出て冒険を始めるにもかかわらず、彼女はひたすら町の図書館や行商から買った書物を読みあさるのに時間を使っていた。研究にも、何に使うわけでもない知識を。
見かねた父は激怒した。
「アリス！！お前は今日から外へ出ていけ。広い世界でお前の知識がいかに役に立たないかを見て来い！！」
「はぁ！？なんですって！？この私(わたくし)の知識が活かせないとでも言いますの！？わかりましたわ、わかりましたわ！今すぐこの叡智を世界に知らしめてやりますわ！」
こうして彼女は7歳という比較的遅い年齢で、冒険へ出た。
もちろん彼女は外の世界を何も知らない。彼女自身も知らないが、かなりの臆病である。見知らぬ脅威や経験に晒されれば、年相応の反応が出てしまうだろう…。
「余計なお世話ですわ！」