容姿・経歴・その他メモ

【経歴表】
■知り合いに生き返った人が居る
■神の声を聞いたことがある（と信じている）
■裕福な家に生まれた
【冒険に出た理由】
■失われた家門を取り戻すため

アヴァルフ妖精諸王国連邦の、メリア長命種たちの王国ベスラシア。
そこにある妖精の女王と会話できる、由緒正しいユトラエルの本家に末の子としてネルシャは生まれた。
神事や政など社交場に出ることも多かったが、引っ込み思案のネルシャはいつも両親や上の兄姉たちの影に隠れていた。
そんなネルシャを、家族達は呆れたように困ったようにいつも見ていた。
その視線に、ネルシャは萎縮するばかりで臆病な性格に拍車がかかっていった。

そんなある日、ユトラエル家の分家であるエルフの家系、エルミエル家を訪れる機会があった。妖精の女王と会話できるユトラエル家を護るため、時には影武者のように盾になるための存在であるエルミエル家において、ユトラエル家の人間は絶対的な存在だった。誰も彼もがネルシャにも傅き、もてなしてくれる。ネルシャは、それがとても居心地が悪かった。

逃げるように、お手洗いに向かった。しかし分家とはいえ広いエルミエル家、いつも1人で動くことがなかったネルシャは迷子になってしまう。心細さと恐ろしさに、目的もなく駆け足で廊下を突き進んだ。

その時、どこからか声が聞こえた。
ネルシャを導く声だった。
ネルシャはその声に従うように、地下へ続く階段を下った。

その先にあったのは、優美な地上とは一転して冷たい無機質な石造りの部屋だった。その奥にあったのは、さらに冷たい金属で出来た鉄格子。その奥に、1人の女性がいた。その女性には角が生えており、獣のような鋭い目つきでネルシャを睨んでいた。

ネルシャはその恐ろしい女性を、しかし初めて恐れなかった。剥き出しの敵意、恐怖。社交場で会う底の見えない他の者やネルシャをユトラエル家の一員という形式的なものでしか見ない家族より、よっぽど理解しやすかった。

恐れないネルシャを見て、女性は目をそらした。何か思うところがあるのだろうと感じたが、それよりもネルシャは彼女を助けたいと思った。
壁に掛った鍵を取って、ネルシャは牢屋の扉を開けた。しかし女性は暗い表情で、外に出ようとはしなかった。

ネルシャはそっと女性に近づき、薄汚れた頬を撫でた。また声が聞こえた。
「ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ」
自分がなんと言ったのか、覚えていない。ただ無意識に、導かれるように、その言葉を紡いだ。
するとまるで神の奇跡のように、ネルシャと女性を包み込むように石の上に花が咲き誇り、柔らかい香りで辺りを満たした。
「…ありがとう」
女性がか細い声で、ネルシャにそう告げた。

女性の名前は、フウカというらしい。しばらく2人で過ごして、そして地上に出た。
しかしそこでは、世界が一変していた。エルフとメリアが、激しく争っている。
エルミエル家が、ユトラエル家が、互いに憎悪の眼差しを向け合いながら血で血を洗っていた。
何が起こっているのか、困惑と恐怖に固まるネルシャを、フウカは考える暇もなく抱きかかえて逃げ出した。
殺意に濡れた人族の争いの中を流れるように、まるでこれが起こることを知っていたかのように淀みなく。

ユトラエル家とエルミエル家は、こうして滅びた。
フウカはエルミエル家に生まれたナイトメアで、幼い頃から監禁され虐待を受けていた。
いないものとして扱われて来たから、色々な噂話が耳に入ってきた。
エルミエル家は、ユトラエル家に従う関係性に嫌気が刺し、それがどんどん膨らんでいって、この日の暴動に繋がったのだと。
ネルシャに全て、教えてくれた。

家も家族も、一夜にして全て失った。ネルシャに残されたのは、あの時聞こえた声に呼応するかのように目覚めた力と、傍らに立つナイトメアのフウカだけ。
途方に暮れる中で、でもその2つがあれば、ネルシャは今までよりも生きていける気がした。

これからは、ちゃんと自分の足で立つ。これまでの誰より頼れる、強いフウカが側に居ても、自立して強くなろうと心に誓い。
そして、滅んでしまったユトラエル家の再興を…いや、今度はフウカのエルミエル家とも確執なく手を取り合える、ユトラエル家の再建を夢見て。
ネルシャはフウカと共に、冒険者ギルドの扉を開くのだった。

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