容姿・経歴・その他メモ

【経歴表】
■毒を飲んだ(食べた)ことがある
■憧れる冒険者がいる
■異性の家族がいない
【冒険に出た理由】
■平和を求めて

召異の刺青:背中

タチェストはかつて、ゼレスターという姓名ではなかった。
その姓名は既に失われており意味を成していない。何故なら、魔物に襲われ滅びた村の何の変哲も無い一家庭でしかないからだ。

タチェスト自身の記憶には、その経緯はもうほとんど残っていない。ただ物心ついた頃の始まりの記憶に、燃え盛る村を背にたった一人必死に走ったことがあるだけ。
その次は、質素なベッドの上で目を醒ましたところで。自分を気遣うように、しかし遠巻きに声をかけてくる一人の強面のナイトメアがいるところだった。
それから、タチェストはそのナイトメア…野伏として一人、山奥で暮らすシュテンというナイトメアに世話をされ、共に暮らすようになった。

それから、二人だけで生きてきた。
自然の恵みに感謝をしながら、自給自足で、人との関わりは無く。
狩りをするために弓術を我流で習得し、シュテンと共に細々と生きてきた。

そんな平穏が奪われたのは、突然だった。
見知らぬ集団が、シュテンの家にやってきて。
家を破壊し、シュテンを痛めつけ、タチェストを攫っていった。
抵抗は無意味なほどに力の差がありすぎて、タチェストはまたもここで、記憶を途切れさせた。
眠る前に、何かを強引に嚥下させられた気がした。

朧気に、夢を見ていた気がする。まるで、死後のような静寂の世界で、甘く優しげな声だけが意識を満たしているような夢。
その声の赴くままに力を行使して。その声の赴くままに使役して。その声の赴くままに世界を創り出した。
ただ心地よいという感覚だけに、長いこと浸っていた。

そして、また目を醒ました。
今度は見知らぬ建物の中にいて、複数人の多様な種族が自分を見て安堵したような顔をしていた。
徐々に意識が覚醒していく。記憶は攫われた時を境に曖昧になっていたが、それまで何があったかは断片的に説明することが出来た。
グラスランナーの男がすぐに部屋を出て行き、しばらくこの場所…月狼亭で、保護された。

明くる日だった。
息を切らせたシュテンが、部屋に入ってきて。
強面の顔をくしゃくしゃにして涙を溢れさせ、固く抱きしめられた。
何があったかは分からない、けど。シュテンと再会出来たことだけは、ただただ嬉しかった。

家はもう、打ち壊されてなくなっていた。
帰る場所がなくなった自分たちに、新たな道が示される。
冒険者。この国では、冒険者への保障が厚いらしく、一応戦う力を持つ自分やナイトメアで生まれつき身体が丈夫なシュテンは重宝されるらしかった。

ただ、それだけでは、ないようにも感じられた。
月狼亭の人々は、自分を深く案じてくれているような。反対に、警戒しているような。
そんな居心地の悪さを少し感じながらも、シュテンと共に部屋を用意してもらい、生活の場を与えられればこれ以上は望むべくもなかった。

時折、金髪のティエンス…カイドロンが、様子を見に来てくれる。
自身の力について学ぶことを勧められ、冒険者をしながらこの声…小魔についてや、それから魔神、奈落の魔域についてなど、見識を深めていった。
シュテンも冒険者としての力をつけて、共に戦うことを約束した。

数奇な運命に翻弄されて、それでも辿り着いた居場所。
ただ、シュテンと共に…シュテンに、安寧を得たい。与えたい。
自分の中に潜む悪意の片鱗を常に感じがながら、タチェストは冒険者として生きていくことになった。

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