異種族が共存している、中規模な街のかなり有名な魔導師の家系に生まれる。
勉強があまり好きではなく、幼い頃はそこまで優秀ではなかった。
だが、その性質はただの超超ちょーーー見栄っ張り(虚言癖の持ち主)であり、周りには「吾輩はなんでもできるんだぞ！」と言い触らしていた。できないにも関わらず。
ある日、近所のボスであったガキ大将からこんなことを言われた。
『お前、有名な魔術師の家系の生まれなんだろ？魔法とかいっぱい見せてみろよ！』
だが、シグリッドは勉強が嫌いな少年であったため、この時点ではほとんど何もできずに焦っていた。(もちろん口には出さなかったが。)
シグリッドが何も言えずに焦っていると、
『ほら！何もできないんだろ！言ったとおりじゃん、できないけどできるって言ってた嘘つき野郎なんだ！』
そうガキ大将から言われ、追い詰められたシグリッドはこう宣言した。
『それは違う。吾輩の能力は故あって封印していた･･････のだ。最後に能力を使ったのは忘れもしないあの地獄の戦場で……いや、この話はよしておこう。そういうわけで能力を解放するために、二ヶ月、いや一ヵ月。時間を貰いたい。それまでには力を取り戻す。取り戻せなかったら何でも言うことを聞いてやろう。』
とんでもない見栄を張るシグリッド。これにはガキ大将もニヤリ。
『いいぜ！嘘だったらお前のことを一生こき使ってやる！』
ガキ大将は子分を連れて帰っていった。
『能力の封印していた……？　一体吾輩は何を言っているんだ……？　自分が嫌になる……。せめて二ヵ月にしておけば……ううっ……』
シグリッドは後悔するがもう遅い。こうして一ヶ月の間猛特訓をすることになる。
だが、勉強が嫌いだっただけで才能がなかったわけじゃない。実は本当に封印していただけなのかもしれないシグリッドは一ヶ月の猛特訓の末に、子供ながらにしてソーサラーの『リープスラッシュ』を打つことができるにまで成長する。
そして、運命の日。
『見に来てやったぜ。さあ嘘つき野郎はどんな魔法を見せてくれるのかな！あはははははは！』
目の前で笑うガキ大将の前で、リープスラッシュを使い近くの大木を倒すシグリッド。
『ははははは･･･････は？嘘だろ？』
『ほれ！言っただろう？吾輩は力を封印していただけだと。このような大木なんぞ一発だ。』
『･････ﾁｯ。お前ら！帰るぞ。あいつは本物だ。』
こうしてなんとかその日を乗り切ったシグリッドであったが、この事件がきっかけで街に神童として伝わってしまう。
家や近所の大人・子供からも質問攻めに遭い、そのたびに『できる！』と吹聴して回るシグリッド。その後の未来はおわかりですよね？
『や、やってしまったーーーーーーーーー！自分が嫌いだーーーーーーーー！』

7歳から魔法学校に入学したシグリッド。
この学校では成績上位だけが特待生となり、エリートへの道(教授や博士)を歩むことを許される。
シグリッドは実は痛いことが嫌いである。
『冒険者になんかなりたくない！』
だが、勉強することは嫌い。そして自発的に動くのもあまり得意ではない。
一体どうしたら････そんなときに、ある本の一文に目が留まる。
【「嘘も百回言えば真実となる」という言葉があります。これは、例え嘘であっても繰り返し言い続ける事により、誰もが真実と感じるようになるという意味です。】
『こ、これだー！吾輩といえば嘘！これしかない！』
シグリッドは虚言癖をさらに加速させ、周りに言いふらした。
その度に、自分の超超超見栄っ張りを信じ、そして地の滲むような努力をを行いその全てを真実とした。
そんな生活を送るうちにいつしか学年TOPへとのし上がり、そして魔法学校の教授となっていた。

学校の教授として働くこと20年。
知らないことは少なくなり、虚言癖も落ち着き始めた頃。(そもそも嘘を付く必要がない)
一人の少女との出会いが人生を変える。

『先生！次は何を教えてくれるのです！？』
新たに学校に入学してきたネーレはシグリッドに何でも聞いた。
知らないことも多く、その度に『も、もちろん知っておるぞ！』と嘘を付く。そして、一日で猛勉強してネーレに教える。
『か、勘弁してくれ～～～～～！』
今日もシグリッドは嘘をつき続ける。

見栄っ張りを拗らせすぎた努力が嫌いな天才。