お人形のように整った容姿を持った人間の女の子。
魔導書が様になる通り、魔法使いとしての才能が高く、色々な魔法の知識を持っている。
また大人びた言葉を使って大人の女性っぽくふるまおうとする。が、根っこは子供。
そもそも大人びようとしだしたのも、1話開始一週間前くらいから。
孤児院に来た理由はちょっと複雑のようで・・・

また、本当の歳は9歳なのだが孤児院に来た日（正確には孤児院にきて最初の朝を迎えた日）を10歳の誕生日としている。

彼女はとある宗教団体の支部長の娘であった。母は物心つく前に先立ち、父親に育てられていた。
その宗教団体は「奈落教」、つまり魔神信仰であった。
そんな家だったので彼女の待遇は非常に悪く、虐待は当たり前、魔神信仰の強要や、魔神の生贄になることを求められるような洗脳まで受けていた。
そして9歳の誕生日の日に、ついにその日が・・・魔神の生贄になる日が来た。
魔神の生贄になるということは、輪廻の輪からも外れ、ラクシアという世界から消えるということ。
彼女は最早諦めの目をしていた。運命からは逃れられない、と。
儀式の場に立たされ、最早泣くことも、顔をゆがめることもなく、ただ運命を受け入れる・・・
はずだった。
その場に一人の闖入者が。
銀髪もしくはホワイトブロンドの髪色をもち、白とピンクのドレスを纏い、剣を持った少女が。
ぱっと見ではとてもじゃないが強そうではなかった。自分が死ぬのは変えられないにしても、あの少女までも死ぬ必要はない。
彼女は・・・アリスは声を上げた。逃げて、と。
少女はその声を聴いて、”大丈夫ですよー。助けてあげますからちょっと目を閉じててね？”と穏やかな声で返してくる。
それと同時に、教団員が何人も少女を襲う。
アリスは、目の前の現実を見たくない聞きたくないと思い、耳をふさぎ目を閉じる。
しかし、そんな彼女が数秒後に違和感に気づき目と耳を開ける。
そこには、予想外の光景が広がっていた。
教団員は、何度も警備隊や冒険者を返り討ちにできるほどの強さを持っていたはずだ。だからこそ彼女は諦めていたのだが。
しかしあの少女は傷1つ、つくことなく・・・寧ろ一方的に教団員を剣で、魔法でどんどん倒していく・・・魔法は見たこともないような不思議なものだった。彼女はそれに目を奪われた。
そうして1分もたたずに、アリスの父親以外を全員倒し、いえ。殺したのだろう。アリスはこんな場所で育ってるので、死体もみたことがある。
アリスの父親は、アリスにとって恐怖の対象だった。絶対勝てない存在。しかし、今の父親は・・・あまりに弱そうであった。
少女は、アリスの父親の前に立ち、首に剣を突き付け・・・アリスに声をかけてきた。
”どうしますか？殺しちゃっても、いいです？”
少女は、父親の生殺与奪を、アリスに委ねてきた。
アリスは悩んだ。弱そうに見えるといっても、恐怖の対象なのには変わらない。父親はアリスに怒号を浴びせ、「俺を生かせ、俺は死んではならん男だ。お前が生きていけたのは誰のおかげだ」などといってきた。その言葉に、一瞬揺れたが・・・少女の顔をみる。少女は、それをみてにこやかな顔を向けてくる。年は見た目では1,2歳くらいしか上に見えない。そんな人が、こんなことをやってのけた。美しい剣術に、綺麗な魔法。まるで、物語に出てくる、魔法使いと騎士を足したかのような、そんな人。
わたしは、アリスはきめた。今までのような父親にとって理想の「お人形のアリス」であるのはやめようと。
目の前の、物語に出てくるような人になりたい。そうでなくても、そういった物語になれるようなことをしたいと。

「お父様、もうわたしは貴方のアリスではありません。」「わたしは、今日から・・・物語のように、いきたい。・・・だから、わたしは”ナーサリー”。今日からはナーサリーとして、生きていきます。」

そういい放つ。
その言葉を聞いた少女は、アリスの父親の首を刎ねる。
それをみて、解放された”ナーサリー”は、崩れ落ちるように眠りにつく。
・・・深い深い眠り。
目を覚ましたら、ベットの上。そして、幼い子供たちの声と、穏やかな女性の声。
わたしは警戒をしたが、女性たちが出してくれた温かいご飯に、子供たちがかけてくれるやさしく元気な言葉。
いつの間にかわたしは涙を流しながら食事を口にしていた。
人生で初めて、子供らしいことをできた。その喜びだろうか。
・・・落ち着いてから色々話を聞けた。
ここは”アルストロメリア孤児院”という場所であること。孤児院の中でも訳あり中の訳ありの場所で、そういう子供が集まってくる場所だと。
院長さんに、先生も、不思議な女性だったし、子供たちも個性豊かな面々であった。なんか爆発音も聞こえてきたりしたし。
でも、不思議と落ち着く場所。今日から一緒に暮らす、新しい家、新しい家族なんだと、すんなりと受け入れられたところで、あの少女、わたしを助けてくれた少女のことを話す。なにかしらないか、と。
そのことを話すと・・・その少女は”アミティ”という冒険者で・・・キングスフォール冒険者としての最後の仕事として、奈落教の支部を壊滅させる依頼を受けていたというのだ。
そしてアミティは、その依頼を最後にキングスフォールから離れたそうだ。
ナーサリーの様子を見る暇もなかったそうで、ナーサリーがここに居ることも多分知らないんじゃないかとも。
その言葉を聞いて、残念に思った。お礼の言葉も言えなかったのだから。
だけど、あの人は夢でもなんでもなくて。本当にいる凄い人だったのだ。なら、いつかきっと会えるであろう。
その時は、きっと・・・


わたしは、それから孤児院の家族として暮らす。
個性豊か、いや、豊か過ぎる面々（子供も大人も）と接してるうちに・・・わたしは大人びた言葉をつかうようになった。
もうちょっと子供らしくてもいいとも言われたが、大人な女性に憧れがもともとあったのだ。
あの少女、アミティも子供らしい姿であったが、所作のところどころは大人の優雅さがあったように思えるし。
そして、本格的に勉強も始めた。
魔法を教えてくれる人もいる。一般知識ももちろん・・・っても時々怪しいけど。
それでも、この孤児院がわたしは好きだと。この孤児院の育ちなんだと胸を張って言える。
わたしは”ナーサリー・アルストロメリア”
いつかは物語になるような人になる、魔法使いの卵。

〇魔法文明語：魔神の生贄になる際にあたり、さまざまな書物を読ませられたことと、真語魔法や操霊魔法の勉強を孤児院にきてからもしていたことから。
〇神記文明語：魔神の生贄になる際にあたり、さまざまな書物を読ませられたのだが、その中になぜか混ざっていた。本人はこの文字を神記文明語だとはわかっていない。
〇魔神語：魔神であるアリスの影響。秘密の話とかする時に、と。

一般的な黒猫の姿をした使い魔。名前はまだない。
家に置いていくこともあるが、外に出るときもナーサリーの肩や頭の上、リュックの中にいる。

〇パペットパフォーマー1：孤児院に来る前のナーサリー唯一の特技であり趣味。人形劇・・・ができるほどではないが人形を好むナーサリーは自分で人形を作ったりもする。といってもお世辞にも綺麗なものではないが。
〇コック1→2：孤児院に来てから身に着けたもの。マグノリアから教わることで少しずつ腕を上げている。
〇スカラー1：孤児院に来てから様々な本を自由に読めるようになったことから。ただ、彼女が読む本の多くは魔法関係であり分野はかなり偏っている。
〇ライブラリアン1：本を好み、図書館に行くことも多いナーサリーはある程度本を探すことなどが得意になっている。

〇セッション2.5