「私はレイチェル。ただのレイチェルよ」
「神官の真似事をしている。何故キルヒア様が私のような人に加護を与えたが分かりませんが、できるだけこの力を世のために使います...」
「そのために沢山の金が必要です。良い気分ではないですが、人の命を金で救えるなら...」
「あなたたちを精一杯、サポートします。よろしくお願いします」

奴隷育てのリカント、レイチェル。
母親はとある奴隷商人の奴隷で、幼い頃から奴隷としてのノウハウを学ばせられた。
ある日、奴隷商人に母親と他の奴隷が街へ連れられて途中、蛮族の襲撃を受けた。
――そのときの襲撃は偶然近くの冒険者パーティーに助けられたが、奴隷商人と他の奴隷、そしてレイチェルの母親は殺された。

絶望の中にレイチェルは自分の命を取ろうとするが、その冒険者たちの中の一人に止められた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「生きるのをあきらめるなッ！」

...その言葉はしっかりレイチェルの心の中に刻まれて、同時に彼女がその女冒険者に対して憧れの感情を抱き始めた。

その後、レイチェルは冒険者たちに近くの街まで送られて、その街のキルヒア神殿に保護された。
しかし今まで奴隷として生きていたレイチェルは他の人と馴染まず、彼女はその神殿でいつも一人だった。
――運命の日が来るその時まで、それは彼女の生活だった。

それは満月の夜だった。
彼女は夜遅くまで祈りをしていると、一人の神父と出会えた。
彼はその神殿の神父ではなく、様々な街へ巡礼をする神父だった。
――彼は一瞬でレイチェルの孤独を見抜いて、それを指摘する。
次々と彼女の内心を暴けた彼は、ついに彼女を問った。
「お前はどうしたい？」と。

「私は...あの人のような冒険者をなりたい！」
「でも、私は戦う力はないです。今更剣術を学んでも、前線に上手く戦えないです」
「それでも...それでも私は...私は...!」
「あの人と肩を並べるように、強い冒険者になりたい！」

その彼女の言葉に......

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「喜べ少女、君の願いはようやく叶う」

彼が手を伸ばした。

―――キルヒア様の加護を貰ったレイチェルだが、次のようなアドバイスを神父から貰った。
「先ずは金を集める。力は別に腕力だけではない。魔法の装備でも君の力になるだろう」
そう言って彼はその神殿を後にした。
そしてレイチェルはそのアドバイスを心の中に記憶しながら、冒険者の道へ始まった......