フェイド・グレイマンは天涯孤独の身だった。
実の両親を知らず、奴隷商の手に渡った胎児の彼は5歳まで檻の中で育ち、いざ売りに出されそうになった所を、彼は地力で逃げ出した。

物心ついた頃のフェイドは、盗みと暴力に明け暮れていた。
彼は劣悪極まりない環境の中で生き残り、暴力の才能を開花させた。

彼が自身の力に絶対的な自信を持ちだした13歳の頃、賭博場潰しで生計を立てていたフェイドは、余りに多くの敵を作り、窮地に立たされてしまう。
――――そんな彼を救ったのは、かつてハーヴェス王国特殊部隊に所属していたアリス・ロイエだった。

魔導死骸区という矮小で醜悪な世界で、"強さを誇示し続ける事"しか生きる術しか知らなかったフェイドにとって、教養と自信に満ちたアリスの存在は余りにも異質で、彼の余白だらけだった人生に大きな足跡を付けた。

アリスが何故見ず知らずの自分を守ったのか、何故自分を特殊部隊に斡旋したのか、それらすべてがフェイドには分からなかった。

だが、そんな事を気にする暇もないほどに、フェイドが知らない事は余りにも多すぎた。
目上の存在に対する礼儀作法、普通の食事の買い方、どうやって宿を取るのか、他者とどう接するのか、他者を蹴落とす以外の生き方を、彼は知らなかったのだ。

そして、アリスにそれ等"普通の生き方"の全てを授けられた。
13歳から17歳までの期間、彼にとって、その年月は一瞬の出来事だった。

人を知り、文化を知り、世界を知る毎日。
見た事のない綺麗な物を沢山見てきた。見覚えのある汚れも、見た事のない汚れも、それまでの13年間で決して知る事の無かった多くのことを知る毎日だった。

――――そうして17歳のある日、ふと立ち止まって見ると、彼は"魔術師狩り"と呼ばれるようになっていた。

一見すると物静かで、鋭い目つきから冷静沈着な男だと勘違いされがちだが、その実はとんでもないアホ。
スカウトもレンジャーもセージも取得できていないのは、つまり"そういう事"。

精神年齢は7歳くらい。
とんでもない大食漢。

論理的な思考回路が稀に垣間見えるが、基本的に"ガメル"だけが彼の中にたった一つある思考基準。

また、社会経験の短さからか、余りにも他人に対する対応が単純かつ淡泊。

生まれ持った戦闘センスだけは高く、成長を要求されるような状況に陥ってこなかった。
そんな彼でも、アルケミストとマギテックが最低限使えるのは、そんな彼が唯一飽きずにやり遂げた結果。
反面、ファイターとエンハンサーは完全に生来のセンスで熟している為、彼が努力で手に入れた経験点はたったの2500点。