リンカへ、
遂に私も冒険の旅に出ることにしたよ！先生たちやお母様とお父様もそれを認めてくれて、王都ハーヴェスでギルドに登録してもらうんだ。まだ初等教育が終わったばかりだけど、ひよっこ魔導技師として、いてもたってもいられなくって。危ないって何度も言われたけど、安全な依頼しか受けないようにって約束したから、特別にね。銃の腕前はまだまだ練習する必要があることは認めるよ。だからリンカに言われて毎日的当てみたいなことをやってる。これでちょっとは上達すればいいけど。でも人前で銃を撃つのはちょっと恥ずかしいかな…。いや蛮族相手にそんなこと言ってられないね。持ってこれた手持ち品が少ないから苦労するかもしれないけど、とりあえずできるかぎりのことをしてみるよ。大丈夫、一人で無理をしないよう気をつける。引き金を引くときはいつも一緒だよ。じゃあ、またね！

リンカへ、
…身分を隠すために冒険の旅に出ざるを得ないようにしたのは私の責任だ。あいつらを中途半端に追い詰めてとどめをさせなかったのは、お前の優しさのせいじゃない。お前が人形であるしかない世界を制圧し、蹂躙すると言っておきながら何もできなかった。人の痛みをわかるためだけに心を殺そうとするお前の性格のことを過小評価していた。耐えさせてしまったのは私の罪だ。武器を持つなと言いながら武器を売り、権利について考えろと言いながら保身しかしない場所にリンカをいさせられない。やつらを地獄に送り込んでやりたいが、お前の体の方が大事だ。いったんハーヴェスに向かうのは悪くない。貴族社会とは違った仲間ができるかもしれない。銃の訓練は順調だ。弾丸に殺意を染み込ませているからな。いざとなったら私が出る。無理はするな。…引き金を引くときはいつも一緒だ。ふん、何度も言わせるな。

「学校でのリンカさんの魔動機に対する姿勢は家の格式と相まってまことに尊敬すべきものがあります。しかし一人で勉強してばかりいて、他人とのコミュニケーションに難があるようです。例えば周りの人間が『○〇』とか『○○○〇』とか噂していても人族は思いやりが深い種族ですからいなくなってほしいのではなくあなたのためを思って発言してくれていると考えるべきです。何時も怪我ばかりしているのは不注意の結果ではないですか？あなたの誕生日にお母様とお父様があなたのお手製の魔動機で犯罪者に対するデモンストレーションを行ったのも、あなたに知らせなかったとはいえ両親の愛情のなせる業だと思います。あなたの表情を見ても言葉に表せないくらいの感情を与えたことがわかります。それなのに最近はリンカさんは反抗的になっているように見受けられます。周りの人の思いやりの言葉に甘えて、汚い言葉や周りの人間を遠ざけるような発言を繰り返すようになっていて、とても暴力的になり、見るに耐えません。あのころの従順でおとなしいリンカさんはどこにいってしまったのですか？人族は協力して蛮族を倒す仲間ですからあなたの銃が心臓を撃ちぬいたとしてもそれは誇りに思うべきです。両親の援助に恥じないように努力を怠らないように。ところで繰り返し繰り返し自分に気をつけろという発言の意図はなんなんですか？リンカさんなりの思いやりなんですか？」