嫋やかな黒髪と吸い込まれるような紫の瞳、美しい色白の肌を持つ。
身体は傷だらけで縫い跡が多く、右眼の邪眼は暴発せぬよう眼帯や目隠しによって隠されている。

経歴表A4-3　『忘れられない恐怖を体験したことがある』
経歴表C2-4　『身体に傷痕がある』
経歴表C6-6　『自殺を試みたことがある』
冒険に出た理由表5-6　『他に生き方がなくて』

生まれた環境　『溺愛』

幼少期の経験　『娯楽の道具』

ハプニング1　7歳
『大怪我をした』

少年期の経験　『魔法を学ぶと同時に』

ハプニング2　15歳
『不自由な身の上から自由になれた』

青年期の経験　『執念と繰り返し』

名前（罵倒語）　チャッカ（玩具）

信条　『復讐：肯定』『知識：肯定』
矜持　『命令されたくない』

オーレルム地方、“死の砂漠”ゼルガにて、バジリスクの父と人間の母の間に生まれた。
彼女が生まれて直ぐに母は石にされたため、男手ひとつで育てられた。

変わり者で珍しい物好きだった父はサーシャを溺愛し、魔法について教える。魔法をぶつけ、肌で術式を感じ、覚えろと言うのだ。
無論、バジリスクの放つ魔法など、幼子に耐えられるわけがない。
エネルギー・ボルトやリープ・スラッシュに留めていただけ、手心はあったのかもしれないが……。

身体は焼け焦げて切り刻まれて傷だらけになり、その度に配下のドーンやトロールが治療する。
そんな方法では到底、多くを覚えられるわけがない。それでも魔法を覚えるため、必死に喰らい付いた。

姉妹はそんな妹に嫉妬し、嘲笑う。玩具と罵倒し、魔法や武技の練習台として容赦なく虐げるのだ。
恐怖は絶え間なく続いたが、父はそんなサーシャを変わらず溺愛し続けた。
果たして愉悦か嗜虐心か、それが逆効果だということは分かっていただろうに。

私はどうして生きているのだろう。


数年後、バジリスク語を完全に覚えた頃には、肌は傷だらけになっていた。
そうすると父は「もう飽きた」と言わんばかりに、座学へと切り替えはじめる。

配下の魔法が使える蛮族を使い、魔法を学ばせようとする。
それらはもちろん、真語魔法、操霊魔法……魔法文明語を扱う魔法である。
様々な魔法を学ぶうち、汎用的に使えるような知恵も数多くついていった。

オーガ、ラミア、バーバヤガー……様々な蛮族を師としてきた。
特にその中でも、外部から来たケパラウラが持ち込んだ深智魔法の知識は実りあるものだ。
魔法を学ぶことは楽しかった。それと同時に、ケパラどもの思想や発言は一切共感できないし、理解しようとも思わなかった。
「これと深く関わってはいけない」と、本能が叫んでいたからだ。

もう少し、もう少しだから。
ほんの少し、長生きしてみようと思った。


成人して、逃げ出すように家を出た。
放浪者(ヴァグランツ)として過酷なオーレルム地方を彷徨い歩き、山沿いに南へ、南へと進む。
なに、暑さには慣れている。サバイバルコートもある、きっと大丈夫だろう。
そう考えて砂漠を歩き続けた。いつまで続くのかすら分からないが、いつか終わるのだろうと信じて……。

永遠にも感じられる行進の末に、気付けばブルライト地方、カスロット砂漠まで辿り着いていた。
ああ、そうだ。カスロット砂漠には、穢れのある者すら受け入れる、寛大で軍事に秀でた帝国があると噂で聞いたことがある。

受け入れてもらえるかもしれない。一縷の望みを掛け、“砂漠要塞”ラージャハ帝国へやって来た。
すると信じられないことに、街中にはドレイクや、自身と同じウィークリングの姿があった。

ふと、目に入った冒険者ギルド支部へ行ってみる。
最初こそ驚かれたが、この街の人間にとって訳アリ蛮族がやってくることはそう珍しくないらしい。
孤独な放浪者(ヴァグランツ)だった彼女は、この日をもって、冒険者となったのだ。

過去は消えないけれど、未来はある。
これからもきっと。