ミネランナ=リオンは知識欲と行動力に溢れた子供だった。裕福な家庭で家族に愛され、本に囲まれて育った、
たまに村を飛び出しては行商人のお手伝いや自分が住んでいるエルフ村の道案内を買って出る、ちょっと風変わりな有名人。

ある日親しい行商人におつかいを頼まれ、帰ってきたときには村が蛮族に襲われて壊滅。兄妹は殺され、両親は行方知れず。
ミネランナ自身も魔物に襲われたが村に残っていた老エルフたちが必死で逃がした。
「君の両親が魔術で襲撃を防いでくれたおかげで大勢の若い衆が逃げ切れた」「貴方には時間、知識、好奇心、それに未来がたっぷりある」「どうか生きて、笑って」

蛮族襲撃の真相は数十年かけて調べるも、結局分からなかった。
これ以後ミネランナの中には「自分が迂闊に外との交流を広げたせいで蛮族を招いてしまったのかもしれない」という罪悪感が残っており、故郷の人には顔向けできないと感じている。

過去のことに一旦整理を付けたのち、ミネランナは冒険者…とは名ばかりの放浪者となった。
エルフの居住地を転々とし、暮らしを支えたり知識を交換したり、たまに同郷のエルフを見つけては逃げ隠れして、フワフワ生きていた。親が探していると現地のエルフに言われてもまともに取り合わなかった。
だが、ある時出会ったタンノズ討伐を主に請け負う冒険者エルフ、ソプラム=エルダに「君は次に蛮族の襲撃があった時に、また見てるだけでいるつもり？」と言われ、いつの間にか自分が受動的に生きていたことを痛感。
ソプラムの手解きを受けて簡単な魔術を取得し、百数十年ほど昔に登録だけしに訪れた冒険者ギルドのドアを叩いた。