容姿・経歴・その他メモ

悪徳の街、今やそう呼ばれるようになったヴァイスシティ、そこには10年ほど前、腕の立つ冒険者だったソレイユの主人と、彼が唯一恐れ唯一愛した妻が営む『火輪堂[ｶﾘﾝﾄﾞｳ]』という日が落ちると同時に店じまいする一風変わった酒場があった。
暴力が横行し粗野で野蛮な住民の多い街で希少な『中立地帯』として確立していたそこはたった二つのルールと利用する者達の共通認識で成り立っていた。
一つ『訪れた者は必ず飯を食って帰る事』一つ『店の中でゴタゴタが起こればその日は店を閉める』。
そして周辺に住む野蛮人達の共通認識、それは『火輪堂の飯はとびきり美味い』。
如何なる犯罪者であろうと人は人、ことさら欲求に弱い者たちの集団だ、うまいメシのためにゴタゴタは起こさない、起こさせない。
そうして『火輪堂』はこんな街でそれなりに幸せな暮らしを実現していた。

カノア・ラーはそんな家庭に産まれた、父からは輝く恵体を母からは気高き精神を受け継ぎ、幸福の中で育っていった。
ある頃から火輪堂の客が連れていた少し年下の少女と知り合う、少女はカリンと名乗った、偶然にも屋号と同じ名前だった。
少女と仲良くなるのはそんな些細なきっかけで十分だったのだ。
少女は毎日とは言わずとも何日も何ヶ月も繰り返し店に訪れその度に会話を繰り返し親しくなっていった。

しかし、そんな幸せはあっけなく終わった。

魔神にとっては人間の積み重ねなど知ったことではない、ただ蹂躙し、ただ愚弄し、ただ破壊した。
あとに残ったのは“だったもの”ばかりだ。
そして自分自身さえも、その“だったもの”に成り果てる……はずだったが、運命は彼を選んだ。
なんのめぐり合わせか彼は蘇生した、魔神化血清という手段を用い後遺症を残しながらも命を永らえさせた。

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