彼、アステル・ノエラは田舎の村で生まれた一人のナイトメアである。家族構成は父、母、兄の三人家族。
母はナイトメアであるアステルを産んだ時に危篤になった物の、運よく村の神官に救われる形で一命を取り留めていた。
母が自身が死にかけたにも関わらず子供に愛情を注ぐ凄まじくタフな人物だったのもあり、家族と共に幸せに暮らしていた。

そんな彼には一人の幼馴染が居た。ウィズ・スペリオという名の、村の神官の娘である。
親同士が仲良くしていたり、家や年が近かったというのもあり、仲良くしながら健やかに過ごしていた。

そうして育った彼には一つ、自慢出来る物があった。
剣の腕だ。

彼の生まれついた村でも英雄譚なんかは随分好まれており、子供達は作り物の剣や木の棒なんかを持ち寄って“ごっこ遊び”をする事も少なくはなかった。
ごっこ遊びと言えば微笑ましい物だが、こんな世界だ。いざと言う時の自衛力はあった方がいい。
訓練と言い換えても問題ない程に、大人の自衛団や、元・冒険者なんかも混ざる本格的な物だった。


その中で、アステルは“別格”だった。大人の自衛団や冒険者が束になって掛かっても、触れる事すら出来なかったのだから。


とはいえ、狭い村だ。その中で一番強かろうと、ただのちょっとした自慢に過ぎない。
そんな彼は、その才能を使って存分に世界へと羽ばたくため…ある日、冒険者となる事を決意した。
その夢物語を、最初に話したのが幼馴染である彼女。ウィズ・スペリオだった。

ただ決意を宣言しただけのつもりだった。自分は凄い奴になるのだと、夢を叶えて見せるのだと。
…だから、彼女が『一緒についていく』と言い出したのは…嬉しかった、嬉しかったが、本当に想定外だったのだ。

ウィズ・スペリオもまた、才覚に恵まれた少女であった。彼女もまた若くして、妖精使いとしての才覚を発現していた。

そんな若き天才二人は、共に冒険者になる事を約束し…その一週間後、彼らは冒険者ギルドの門戸を叩いた。
それが、二人の冒険の始まりだった。

ウィズはマジの“天才”だ。俺だって才能はあったつもりだった。でも、まるで足りなかった。
俺より強い奴なんか山ほど居るし、俺より才能ある奴だって何人も居た。ウィズだってその一人だ。
ウィズに追いつくには、あいつの隣に並ぶには、俺はもっと凄くないといけない。

理想通りに体を動かせ。フィジカルが足りないなら技で埋めろ。相手を分析して攻撃を叩き込め。タフさに甘えるな。身のこなしに甘えるな。鎧の硬さに甘えるな。俺が倒れれば、危険に晒されるのはあいつなんだ。

やれる事は全部やる。弱音なんて吐いてやるもんか。あいつが見てる、あいつの中のカッコいい俺の背中に追いつくんだ。
見てろよ、今に追い越してやるからな。ウィズ…！

・村に居た頃～冒険者としての最初期は剣を使用していた。英雄譚への憧れが切っ掛けであり、実は今でも武器の中では剣が一番好き。ただ適性・戦闘スタイルとの兼ね合いから、メイスへと武器種の転向をした。

・ビッグマウスではあり、調子に乗っているようにも見えるが、その実誰よりも自身の実力を客観視している。向上心の塊。