――私には何もなかった――

オルトリアはそう回顧する。

彼女は生まれた時から一人だった。
この時代ではなにも珍しいことじゃない。理由のない孤児などはいて腐るほど転がっている。
そんな中でも、孤児院に拾われた彼女は幸運な方だった。
日々を生きるためだけに生きる生活。何を生み出すわけでも、何を失うわけでもない。ただ空気を出し入れするだけの入れ物。
そんな生活をずっと続けていた。

「それは生きてるなんて言えない。君はもっと幸せになってもいい」

そう言ってくれた人が居た。
そう言って手を握ってくれた人が居た。
世界に色を付けてくれた人が居た。

それからの日々を語る言葉をオルトリアは持たない。
ただきっと、その日々は幸福だったと、人はそう言うのだろう。
その時を生きた彼女は、それを感じ取るには心が荒み切っていた。
だけど、それは確かに彼女の心を少しずつ温めていた。

その日、彼は体調を崩していた。
村で流行していた流行り病。死に至るとか、何か後遺症が残るとか、そんなものではないただの流行風邪。
布団で横になった彼の世話をし、薬を買いに家を出た。
薬を買うついでに、どうせなら彼の好きな物をつくろうと、少し町を巡った。
沢山の食材が入った袋を手に、家路をたどる。
そしてたどり着いた村の片隅で

真っ赤な炎が燃えていた。

黒い煙が空に昇り、木の柱が焼け落ちる。
彼女の目の前で燃える小さな家。
彼女の目の前で燃える彼の家。
彼女の目の前で燃える彼女の世界の全て。

気が付けば走り出していた。
焼ける炎の中に飛び込んだ。
体の焼ける痛みも、熱さも、何もかもが彼女には届かない。
瓦礫をかき分け、奥へ奥へ。
そして見つけた。彼の姿。
炎の中、倒れた姿。
そして傍にいた蛮族。
手に持った槍からは赤い液体がしたたり落ち

「あああああああああ！！」

――私には何もなかった――

オルトリアはそう回顧する。

――なかったのよ。最初は、なにも――

オルトリアはそう回顧する。

――今は一つだけ残っているわ。そう、一つだけ――

オルトリアはそう回顧する。

――殺すわ。全部。今度は私が全部奪う番。復讐の為に私は生きるわ――

オルトリアはそう回顧する。

――もう。私には。これしか――

オルトリア・ルーンフェルトの経歴
経歴1：大切な人と生き別れている
経歴2：物心がついた時には独りだった
経歴3：魔物に襲われたことがある
冒険に出た理由：家族をすべて失ったので

・救命草を１つ消費
・北向きの針の獲得
・宿代-30G 食事-26G

・アウェイクポーション１つ消費
・保存食１つ消費
・魔香草２つ譲渡