経歴

神の声を聞いたことがある・命を助けられたことがある・自殺を試みたことがある

｢毒の花｣｢気持ち悪い｣｢近づかないで｣｢返り血の悪魔｣

｢死んじゃえばいいのに｣

泣かなくなったのは、何時からだろう。
独りになったのは、何時からだろう。
喋らなくなったのは、何時からだろう。
何も感じなくなったのは、何時からだろう。

死にたくなったのは、何時からだろう。

大嵐の中、目の前の崖を覗き込む。
下には鋭く尖った岩と、大きくうねる波が見える。
今居る崖の上から崖下まで20m程だろうか。
『ここから落ちれば、死ねるかな…』
そんな事を考えながら、崖下をじっと見つめる。
大粒の雨が体を打つ。寒い。でも、これでも死ねそうだ。
全身の切り傷や擦り傷に雨水がじくじくと滲みる。
箇所によっては血が未だに止まらない。
『…もう、いっか』
こうしている間にも、体が少しずつ動かなくなってくる。
力を振り絞って、自分の身を崖から乗り出す。
その時だったーーー。

｢うふふふ。惨めで、無様で、汚らしくて、今にも死にそうなそこのあなた。｣
どこからか声が聞こえる。だが、辺りを見回しても姿は見えない。
｢あぁ、探しても無駄よ？姿を消しているもの。でも…これだと少し、不便かしら？｣
突如、目の前の何も無い「空」に黒い渦のようなものが現れた。
「はぁ〜い、こんにちは。私はアリス、扉の小魔（ゲートインプ）よ。」
そこに現れたのは、妖精ーーーではなく、小魔だった。
｢いい、いいわぁ。その混乱してる顔。本当なら色々と説明するのでしょうけれど…混乱したままの方が面白そうだし、このまま続けちゃうわね。｣
クスクスと笑いながら、小魔は何かを唱え始めた。
すると、頭の中に突然太く、低い声が響く。

【汝、力を望むか…？】
急な呼び声に驚いていると、その声は言葉を続ける。
【望まぬのであれば、そのまま惨めに死に絶えるが良い…。だが、望むのであれば、その小魔へと手を伸ばせ…。】
何が起きているのかもよく分からないまま、私は手を伸ばす。
【契約成立だ…。我の力、お主へ分け与えよう…。】
そう言って、声は聞こえなくなった。

｢あ〜あ、契約しちゃった〜？なら、これから宜しくね、ご主人サマ♪。｣
小魔はまた姿を消す。だが、分かる。小魔は近くに居る。
｢まずは手始めに…あなたを虐げた者へ、死【救済】をプレゼントしに行きましょ♪。｣
どくん、と心臓が跳ねる。全身が燃える様に熱い。
何とか抑え込まないといけない。このままこの衝動に身を任せてはまずい。
｢ほらほら。あなたにはそれだけの力があるのよ…♪。さぁ、楽しい楽しい復讐の旅の始まりだわ！｣
ーーーーーーーーーー。 そこで記憶は途切れてしまった。

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