1回目：なし
2回目：【恋愛】注目を集めてしまう
3回目：【事故や悲劇】本当の親を知らない
冒険に出た理由：失われた文明を取り戻すため
ヴァグランツになった理由：平穏を求めて
信条：努力の肯定、強さの肯定
吟次／執着：常に旅／冒険をしていたい

　ロカニーの少女時代はフューマの歓楽街がすべてであり、一般的な教養を受けることはなかった。
　母親から「生き延びたければ少しでも自分で稼ぎなさい」と言われ、店で踊り子をさせられていた。
　最初は足下が覚束なかったロカニーであったが、14才になる頃にはしっかりとした踊りを見せられるようになり、次第にロカニーを目的として来店する客が多くなって店主からも褒められていた。
　そんなロカニーが幸せだったのは15才を迎えるまでだった。
　いつも通り店で踊りを披露していたロカニーは“お客さんが自分を見る目がいつもと違う”と違和感を感じていた。
　踊りを見せ終わった後、店主にステージに残るように呼び止められ、突如として始まったオークション。
　店主から出された飲み物を飲みながら、一体何なのだろうかと思っていた。
　いつしかオークションは終わっていたが、ロカニーは体に渦巻く“謎の熱”に息を荒げていた。
　一番高値をつけた男に抱き抱えられて店の二階のベッドだけがある簡素な小部屋へと運び込まれる。
　いつも掃除ぐらいでしか近寄ることのなかったその部屋で、“ウサギ”だとか“花”とかの意味を知ることとなった。
　その辛さに泣き、母親に泣きついた。
　だが母親は非情にもこう告げた。
「実の娘でもないのに育ててやったのだから、恩返しぐらいしなさい」
　シャドウである自分が人間の母親に育てられていることに疑問すら抱かなかったほど、ロカニーは社会を知らなかった。

　ロカニーがフューマから旅立ったのは16歳になってからだ。
　店を訪れた男に見初められ、連れられる形で様々な街を巡った。
　ロカニーに運がなかったのは、その男が悪評高い商人であったことである。
　商人は冒険者ギルドの御用商人になるため、ロカニーを冒険者ギルドの上層部に貢いだのであった。

　冒険者ギルドに渡されたロカニーにとって幸運だったのは、昼間は職員として働かせるために真っ当な読み書きや常識を与えてもらえたということだろうか。
　その中でシャドウという種族が彼方より訪れた種族であり、かつては文明を誇っていたことを聞かされた。
　自由の身になることはないだろうと諦めていた一方で、自由への憧れを捨てきることは出来なかった。

　半年後、昼間に職員として働いていた時の話だ。
　普通の冒険者とは異なる身なりの人々がギルドへと現れた。
「このギルドに所属する全員に告ぐ！　武器を捨てて床に伏せろ！　罪状は上がっているんだ！」
　裏で何が起きていたかは知らないが、噂で聞いたのは腐敗しきっていた関係者が牢に入れられたことだ。

　受け取ったのは、僅かばかりの謝罪金と口止め料。
　そのお金で装備を整え、ロカニーは旅に出た。
　自らの努力がいつしか実を結び、自分を自分で守れる強さが手に入れられると信じて。
　冒険者ギルドに対しての不信が拭いきれなかったゆえ、ロカニーは放浪者となった。
　一箇所にとどまることなく旅を続けたロカニーは“塔”の事を知り、“塔”に夢を馳せた。
　可能性は薄くても、自分が知らないシャドウの文明の一端に触れられるかもしれないと。

　冒険者ギルド時代に付けられた二つ名であるが、そこに含まれるのは文字通りの意味だけではない。
　暗常（あんじょう）は鞍上、令嬢（れいじょう）は隷嬢。
　つまりはロカニーが冒険者ギルドに居た時代に「冒険者を楽しませるためのだけの情婦」であることを揶揄するものである。
　当人は揶揄を知った上で「事実だから」と薄っすらと笑いを浮かべるのみであるが、事実関係を知る一部の冒険者ギルドの上層部からは「彼女があの大捕物を吹聴して冒険者ギルドの評判にダメージにならないか」不安要素になっているらしい。