聖印と神像

【聖印】
円の中に二枚の札と賽子、そして一枚の銀貨がデザインされている。
聖印には必ず聖別された銀貨が意匠として埋め込まれているため、真贋の判別が付きやすい。

【神像】
フードを深く被った性別不詳の人間の姿で描かれることが多い。
片手には札、片手には剣を携えていることが共通している。

神格と教義

【神格】
　ディールは魔動機文明時代に生まれ、伝説の賭博師として名を残した小神です。
　その生き様から民草の支持を一身に受け、地方丸ごと全てに意識改革をもたらしたことで神格を得るに至りました。

　ディールの賭博師としての腕は、非凡なれど天才と呼ばれる程ではなく、さらには常勝無敗とも縁遠く、度々莫大な金を集めては勝って集めては負けてを繰り返していたとされます。

　しかし、勝った時――しばしばこれは想像を絶する額に至ります――は常にスラム街等に住まう恵まれない者たちへと施されていました。曰く「宵を越せねえ者に宵越しの金をばら撒く、これが粋ってもんじゃあねえか？　ガハハ！」などと嘯いていたという説話が多数残されています。

　そんな大賭博師に身を救われた一部の者たちの感謝に始まり、その噂を聞いて生き様に憧れた子供や、酔狂な酒飲みたちが立ち上がったことが、彼が神格を得るに至ったきっかけともされています。

　とある時期から、賭けの金(タネ)を得るために仕事を探し、勝って大金を得れば半分を寄進、負けてカス銭となれば全てを寄進する、という賭け仕草がにわかに流行り始めます。
　これが数年をかけて徐々に浸透していき、結果として弱者救済と働き手の増加を生み、吟遊詩人の与太話として風に乗り、それらがやがて大きな波となり、近隣の街へ、ひいては一部地方まで影響が及び始めたのです。

　彼の酔狂な行動から始まりを告げた予想外のこの一連の流れは、地方全土の財政を健常化させ、商業の活性化にまで繋がっていきましたが、ディール本人としても読み切れなかった大勝だと大笑いしていた、と伝えられています。

【教義】
　「常に何かを賭けて決断せよ」という教義が広く知られていますが、後に続く「何かを背負わずして何を為せる」という言葉はあまり語られることはありません。

　また、真摯な願い、あるいはか細き祈りに神託が下りやすいとも噂されていますが、それも定かではありません。
　ギャングスタの卵や賭博場で熱心に祈りを捧げる信徒が多いため、恐らくその姿を見た者たちから生まれたしがない噂である、というのが定説です。

格言

「一を作れ。無に何を賭けても生まれるは虚無と知れ」

「一切を賭けよ。己が運命を切り拓く、その代償を軽んじる勿れ」

「一期を足掻け。藻掻いた末に明るく生きよ。汝を縛る枷は己なり」