タンノズの一族として生まれたが、人の形をして生まれたウィークリングだということで奈落の壁付近に捨てられる。親切な人族が拾うだろう、という考えがあったらしいが不幸なことに親切な人族ではなくヴァイスシティを拠点にしている悪徳商人の拾われた。そこで適当な残飯を与えられて育ち、歩けるようになる頃には労働力として使われることになる。
人の言葉を覚える前から蛮族として扱われ、客や通りすがりの人族からも厄介者扱いされていたせいか自分のことを蛮族だと自称している。しかし人の顔色を伺うのは上手くなった。使えない処世術も少しは覚えることが出来た。そういう生き方が当たり前だったせいか、疑うことも自分のプライドを持つこともなかった。

身体が大きくなり、商人の背丈どころか用心棒として雇われていた放浪者の背丈すらも超えてしまった頃。置いておくのはリスクがある、という理由から再度捨てられることになる。コルガナの町へ荷物を運搬をしていたクロだったが、それも終わりいざ帰ろうとした矢先、馬車が忽然と姿を消していたのだ。二度目と言うこともありなんとなく悟ってしまったが、だからといってすぐに一人で生きていけるわけではない。仲介人がいなければ依頼を受けることも出来ないうえ、この異形の腕では一般人からは警戒され、雇ってくれるのも犯罪すれすれのものを運搬している行商人やチンピラまがいの集まりばかり。
上手く報酬について交渉することが出来ないせいか、飢えて気絶することも少なくなかった。飢えのせいで生死をさ迷うことも、決して一度や二度ではなかった。自分はこのまま死んでいくのだろうと、自分と同じ道を辿り先に終わってしまった人族の子供を見て思ったこともあった。

そんなある日、今までの不幸を取り戻すような幸運にめぐり合う。元冒険者で、今は旅をしながら物を運搬したり魔物を討伐する商人の荷馬車に拾われたのだ。彼は冒険者という経歴のおかげかクロを蛮族扱いして使い捨てることはなく、まるで普通の人族のように接してくれた。労働の対価として金銭や暖かい食事、寝床などを提供してくれたほか生き抜くためにと体術も教えてくれた。
各地方を転々としながら、用心棒としてその元冒険者ともに旅をするのは、クロの人生において初めての幸せな思い出で充実した日々だった。
手合わせを挑んでは体格差では圧倒的にこちらが有利なはずなのに、いつの間にか負けている。かすり傷ひとつつけられたことはないが、存外にも負けず嫌いな性分なのかめげることはなく「いつかは勝ちたい」という分不相応な目標を抱いていた。
とはいえいつまでもおんぶにだっこで旅に同行させてもらうばかりでは、迷惑ばかりかけてしまう。戦闘技術を学び、商売の知識も得た頃、クロは元冒険者へ別れを切り出した。

旅の終わりはヴァイスシティ、幼い頃を過ごした故郷だった。良い思い出は全くといっていいほどないものの、あの頃の自分を越えたいという強い思いからクロ自身が希望した土地だった。
大きくなって戻ってきたヴァイスシティは悪いものではなかった。小さく弱そうな頃の自分であれば搾取される側だったかもしれないが、鍛えた肉体と教わった商売の知識で、食料や素材類を売る店の運搬を任されることになった。人間よりも沢山の荷物を運べる上に、いざという時は用心棒としても活躍できるクロを今の店主は重宝してくれている。ずっとあこがれていた冒険者になることも許してくれて、無論仕事は続けているが冒険者業も応援してくれている。

リヤン

初めて依頼へ向かった際に出会った、不思議な喋る本。興味を引かれて話しかけてみれば、気さくで自分のような蛮族にも優しい人物？だった。それからというもの、焔竜亭へ顔を出すたびに少しの時間会話を重ね、リヤンのことをもっと知りたいと思うようになった。クロにとって、リヤンは初めて出来た「推し」だった。
現在ではたまの手入れをさせてもらっている。

ブラッドニー

同じウィークリングでありながら、クロのような劣等感のない明るい冒険者。明るいながらも確かな実力を持っており、そんなところがクロにとっては憧れの人だった。しかし、何度か依頼へ行くにつれて憧れから友愛へと変わっていった。
……友達って言っていいのかな？それとも、本人に聞いた方がいいのかな。

身長　185cm
体重　92kg

浅黒い肌をし、長い黒髪を三つ編みにまとめている体格の良いウィークリング
タンノズらしい甲殻に覆われた腕は右手にある
一般常識はそれなりにあるものの、あまり頭は良くなくよほど特徴的でなければ人の名前を覚えるのが苦手
はじめて見る物に対しての好奇心が強い
人を傷つけたりすることに対しては積極的ではないが、悪いことをしている相手や向かってくる敵は倒す主義
自分のことを蛮族と自称している