ゆとシートⅡ for SW2.5 - ゆと工公式鯖

とある少女の見聞旅程 - ゆとシートⅡ for SW2.5 - ゆと工公式鯖

とある少女の見聞旅程エピローグ

基本取引価格:
知名度
形状
カテゴリ
製作時期
概要
〈始まりの剣〉★級冒険者の、新たなる旅路の一端
効果

由来・逸話

「これが最後、っと」
ハールーンから伸びる街道の近くにある森の中で、魔物が叩きのめされる。
「こんなのを命懸けで討伐してた時もあったな~」
叩きのめした張本人は呑気に過去を思い出しながら、素材を剥ぎ取っている。

凶暴な狼の討伐依頼。《涼月の呪い亭》とは別のギルドで受けた依頼だ。現在プリアンカは当てもなく旅をしている。それなりに慣れ親しんだ街を出て、旅に出た理由はいくつかあるが、直接のきっかけは───

まだハールーンにいた頃。プリアンカは酷く退屈していた。闘い甲斐のある魔物は、あの世界を喰らった龍を討った日を境に全く現れなくなってしまった。もちろん平和であるのは良い事だが、全く闘えないのもつまらない。何より、今の彼女にとって平和であることの価値は低くなっている。
ソフィアや探偵さんが旅に出てしまい、オロルの姿を最近見ないからだ。この街で出会った大切な友達も、お世話になった守りたい恩人もいない日常が、平和である意味は薄い。

そんなつまらない日々が続いたある日、ギルドに呼び出された。自分宛てに手紙が来ているのだという。
誰からなのか、まさか今更師匠から来たわけでもあるまい――皆目見当もつかなかった差出人の名は、オロル・ポレールであった。
「最近見ないと思ったら……」
そう言いながら、読み進める。


「はあ……師匠も、友達も、恩人も……なんで、私の大切な人はみんなどっか行っちゃうんだろう」


──冒険者になった頃、プリアンカはもっと遠くのギルドに行きたかったが、資金が足りなかったためやむなくハールーンにいた。田舎の故郷を出て、もっと遠くの街を見てみたかった。だが、大切な人たちに会ったことでその思いは薄れていった……ならば、大切な人が去った今、ハールーンに残る意味など無い。
依頼で遠い地を訪れる度に、普段と違う景色に目を輝かせた。だから、旅の中に楽しみがあると思い、実行に移しているのである。無論、またオロルや師匠から便りが来たときのために、通話のピアスを預けておいてある。これでも〈始まりの剣〉級だ、これくらいの対応はしてくれるだろう。

「討伐依頼済ませてきたよ~」
剥ぎ取った素材を片手に、件のギルド兼宿屋へ帰る。
「プリアンカ様ですね、お疲れ様でした……貴方ほどの方であれば、わざわざお代を頂かなくてもお部屋は用意するのですが……」
「え、そうなの?……ま~今返されてもめんどくさいし、払ったままでいいよ」
「そうですか……依頼の方は確かに確認しました。報酬はこちらになります」
「ん、どうも~」

「私も有名になったよなぁ……ハールーンからドーデン地方にも届くくらい有名になった、んだけどなぁ……」
ギルドからの申し出を断りつつ、未だ見つからない師匠を思う。師匠の捜索も並行しているが、新たな手がかりは見つかっていない。
「師匠なんだから、私より強くなってるだろうし、それなら名声もたくさんあるはずなんだけど……」
特に名前を聞いていないという者ばかりだった。師匠を探し始めてかなり経つが、まだ見つからない上に故郷も壊滅していたとなると――
「いけないいけない、諦めちゃだめだ!ソフィアとツェーンちゃんに背中を押してもらったんだから!」
「……」
「『苦しいときはいつでも甘えにおいで』って、言ってたのになあ……あはは、やっぱ寂しい、ね」
言いながら見上げる夜空に、あの日のような流星は見えない。


「すみません、そこの方……もしかして、旅の冒険者の方でしょうか?」
ぼんやりと空を眺めていると、突然声を掛けられた。
「私?そうだけど、なんで急に……」
「ちょうどギルドから出てきたところを見て……失礼、申し遅れました。私は、ミルタバル様に仕える神官でございます。残念ながら、主の声は聞こえないのですがね」
「挨拶ありがと、私はプリアンカ・ハート。旅する拳闘士だよ!それで、神官さんが何の用事?」
「プリアンカさんです……拳闘士のプリアンカ?もしかして、ハールーンの涼月の呪い亭からいらっしゃったとか……?」
「そうだね。ありがたいことに、この辺にも私の名前が広がってるっぽい」
「おお、まさか〈始まりの剣〉級の冒険者に声を掛けていたとは……」
流石に眼の前の少女が世界の危機を防いできた冒険者だとは思わず、驚いたようだ。

しかし、咳払いで切り替えて話を進める。
「さて、用事の方ですが……プリアンカさん。貴方は、どうして旅に出ようとお考えになったのですか?」
「旅の理由?半分は人探し、もう半分は……なんて言おうかな……行ったこと無い場所で、見たこと無いものを見たい、みたいな?」
「なるほど、良い動機でございますね。それであれば、恐らく好奇心も強い……と思うのですが、いかがですか?」
「うん、強いと思うよ。珍しいものがあるって聞いたら見てみたくなっちゃうかな!」
「素晴らしいですね。私が声を掛けた理由は……率直に言うならば、布教のためでございます。ミルタバル様の信者には冒険者の方々も多く、特に貴方のように好奇心の強い方には我々の教義に深く共感していただけるため……あっ!」
「えっ急に何!?」
「貴方があのプリアンカさんと聞いて驚いてしまい、うっかり聞き忘れてしまったのですが……現在、何らかの神を信仰していらっしゃいますか?」
「ああ、そういう……信仰はしてないし、今まで考えたこともなかったなあ……」
「それでしたら良かったです、無理に布教するわけにもいきませんので……そして、考えたこともなかったとなると、我々の教義も全く存じ上げないといった感じでしょうか?」
「全然知らないね。でも、私みたいな人に共感してもらえるような教義はちょっと気になるかも?」
「嬉しい話です。では早速……と言いたいのですが、この時間です。一度日を改めましょう」
「まあ、もう夜だからねえ……」
「ええ。気が向いたときで構いませんので、この街のミルタバル神殿を訪れてください。この後神殿の者に伝えておきますので、貴方の名前を言えば応対してくれるでしょう」
「わざわざどうもね~」
「こちらから声を掛けましたので。それではこれにて失礼します。貴方が探し人に、良き神に出会えることを祈っております」
「はーい、ありがと!じゃあね~!」

故郷の集落を飛び出して冒険者になって、かつては自分のためだけに戦っていた。だが涼月の呪い亭で、探偵さんなどに助けてもらい、大切な友達のオロルやソフィアに出会えた。そのことに深く感謝し、彼らを守るため、助けるために戦うことを決めた。しかし、みんな散り散りになってしまって、もはやその決意は意味を成さない。生きる意味の一部を失って、実の所プリアンカはかなり凹んでいるのだ。
どうせ旅人の身だ、時間に余裕はある。一度考え、自分にとっての新たな支柱を探すのも良い……かもしれない。
「……難しいこと考えると眠くなってくるや。寝よーっと」


その日から、少しの時が経った。その間に様々な街を訪れ、様々なものを見て、様々な話を聞いた。まだ見ていないものはたくさんあるだろう。探し人もまだ見つかっていない。それでも、未知を知り、未知を解き明かすために、プリアンカ・ハートは旅を続ける。
「神の指先ミルタバルにかけて……今日も頑張ろう!」
彼女が満足するまで旅は続く。その強い好奇心が満たされる日は、果たして訪れるのか……

製作者:Annsoni