一定期間の記憶が無い
高レベルの魔法をかけられた事が有る
大切な人と生き別れている

友を追って

謎に包まれている

何処で産まれたかは知らないけれど少なからず自我が芽生えた頃には私は島の研究所で育っていた。
そこで一緒に暮らす友達と日常を謳歌しながら。
日々打たれる薬の実験体として過ごしながら。
そもそもなんの研究をしているのかすら知らなかったけれど、
少なからず日々変わっていく研究施設に居る子の変化からまともな実験をしていないんだとは感じていた。

施設の中で出来た友人の一人に逃げだそうと提案した。
逃げること自体には賛同して貰えた普段から遊び場所として過ごしながらこの島は外界から離れていることは悟っていた。
それでもいつ死ぬか分からないこの状況で友人だけはせめて護りたいと願っていた。
もう一人の友人が告げた。
逃げ出したところで捕まるのは明白、保護して貰うには証拠が必要だと。
あぁそうだ、この子達の親だと言い張ればこちらが否定をしようがいつかは連れ戻されてしまう危険性だってあるのだから。

だから私達は最善の準備を行い脱走を計画した。
実験薬の確保、資料の強奪、兵器の作製。知識を溜めて実行した。
最初は上手くいっていた。
資料も奪えて己を守る力も手に入れて、後は逃げ出すだけだった。
けれど最後に失敗した、否、敵を侮っていたのだ。
資料の強奪に夢中になっている間に油断をして私が捕まり追い詰められて...

友人の一人に逃げろと告げた。
誰か1人でも逃げ切れば計画は成功するからだろう。
誰かが逃げ切るためには誰かが犠牲になる必要が有る。
私は覚悟を決めた。大切な「...」「...」「今まで楽しかったよ...さようなら...」
マギスフィアを爆発させ自爆をして私は死んだ...はずだった...

私は小さい頃、施設で育ったような気がする。
気がすると言うのは私はとある国の病室で目覚めた以前の記憶を持ち合わせていないから。
私を助けてくれたのは青いリルドラケンの青年、彼は私の安否を確認すると
「生きていて良かった。これからは何にも縛られず自由に生きろ」
そう告げて出て行ってしまった。
それから彼には1度も出逢っていない。
噂では冒険者になったとか死んだとか言われているけれど国には居ないらしい。
暫くはナイトメアの青年にお世話になった。
彼は私に剣術や魔法、軍事知識を出来る限りで丁寧に教えてくれた。
彼曰く君の将来の選択肢を狭めるつもりは無いが最低限の護身術程度は嗜んでおくといい...らしい。
不器用ながらも心優しい人物だった。
そして有る日...ふと思い出したかのように...とある記憶が雪崩れ込んだ。
楽しかった記憶、友を護ろうとした記憶、そして...死んだ記憶。
その事をナイトメアの青年に相談をするとリーンカーネーションでも無ければ何者かがフェイクメモリーで記憶を植え付けたか、その2択だろうと教えてくれた。
きっと、専門的に調べれば分かったのだろうが私はそれを拒んだ。
どうしても他人事の記憶には思えないし消えてしまった自分の記憶の手掛かりになると思ったから。
そんな朧気な記憶と友人の姿だけを胸に秘めて私は世界を旅することに決めたのだ