お守りを持った状態で捨てられ、猫として人に飼われていた少女。
2、3歳になった頃、母が不定期に会いに来るようになった。
母曰く、秘密の闘い方を教えるから覚えろ、と。
それ以降、飼い猫として過ごす傍ら母に連れられ戦う術を覚える毎日だった。

母から教えられたのは幽世のさらに向こう、その力を引き出し強力な拳を打ち込む技術。
5歳を迎える頃にはその力を覚えていた。それ以降は不定期に母に連れられ、幽世という領域で戦う訓練を積まされた。

6歳になったある日、飼っていた主人がどこかに消えた。どうやら幽世に迷い込み、神隠しにあったらしい。
いてもたってもいられず、幽世へと飛び込み、主人を助けに行った。
1つ目の幽世、ここにはいなかった。2つ目の幽世、ここにもいなかった。3つ目の幽世、いなかった。

いくつもの幽世を渡り、最終的に見つけたのは主人の遺体だった。
この時点で9歳になっていた。そこに残るアラミタマを祓った瞬間、意識が途絶えた。

…意識が目覚めた時、知らない世界が広がっていた。
その光景は、母が言っていた"楽土"と似ているように思えた。
どうやら泡沫世界？から来た者というのは珍しいらしい。
…もし、研究者に発見されれば自由はなくなるかもしれない。
目的も何も無くなった今、誰かの飼い猫の生活に戻る気も起きず、放浪することにした。