今は亡き国家の、神官となるべく育てられていた。
幼いころからそう育っていった為方針に疑問を抱いてもなかったが、英雄と呼べるほどの人物に出会い、関係を深め絆されたことで考え方が一変する。
その人物が知る戦闘の術や技術を密かに学びながら、自身の身の上について考え、国の外へと旅立ちたいという思いが強くなった。

偉人が自らと別れを告げそう日の立たない13歳のころ、とうとう機会は訪れた。
大規模なクーデターが勃発し、大混乱が起こったのだ。
もちろんそれに乗じて必要なものをかき集め亡命を図る。
そして、紛争から逃れるための魔導船に密かに乗りあっさりと目論見が叶う。

その後、ほんの数か月前の出来事だがその国家は地図上から姿を消した。
勿論何とも思わない。
学のある者は知っているであろう、「***」という国と「***」という少女は『もうこの世にはいない』のだから。
今の私は「アティ・ディマカエリ」、それ以上の何者でもない。

持っていたお金で流浪の民となっていたが、流石に金銭が底をついてくるのは時間の問題であることはわかる。
流浪の民であることには変わらないだろうが、取り合えず金銭を稼ぐ方法は必要だろう。
であるのなら、話に聞いていた冒険者となれば取りあえずは困らないだろう。
戦うことでしか、自身を表現できないのだから。
少なくとも、今のところは。

個の考え方を尊重しながらも、自分の考え方を変えない為衝突することは多いだろう。
また、亡命という大きな成功体験があるせいか、成功が重なると調子に乗り出す。
精神的にかなり未熟のようだ。

自分に課せられた運命を破ることが出来た彼女にとって『運命に縛られている』というのはこの上なく腹立たしいことだ。

他人の意思を尊重し、自身の意思を信じること。
ありのままの世界は美しいのだ。

初心に帰り一刀流で挑んだ、亡命後初めてのお仕事だった。
乱暴で、考えの読めないパーティと関係を持ってしまったと多少頭を痛めている。
だが、かつての生活より良い意味で騒々しく、個性的で、とても楽しかった。
共に戦う仲間がいるというのは、こういう気持ちなのだろうか？

二刀流で挑んだ此度の依頼。
やはり血筋だろうか、斬り刻む度に興奮してしまう。
他の冒険者とはうまくやっていくことが出来そうなのは、ホッとしているところだ。
...着替えはもっと警戒して行うとしようか。