経緯

俺はどこにでもいる普通のサラリーマンだ。
休日のアニメやゲームを楽しみに生きて、普段は面白くもない仕事を淡々とこなす…いや、ちょくちょく失敗して上司に頭を下げている。
学生時代は空手でそこそこの大会に出てたりもしたが今となってたは過去の栄光、ただの思い出になった。

その日はたまたま銀行に用事があって、面倒だなって思いながら待ち合い室でソシャゲの画面を叩いていた。
そして…そんな時に限って事件が起こった。
俺の意識は一発の銃声でスマホから現実に引き剥がされた、店内にいた全員の視線が銃を監視カメラへ向けて放った男へ釘付けになっていた。
一瞬の静寂
そして悲鳴と喧騒が店内を満たす、それを男は銃を天井に向け恐ろしい銃声で場の空気を塗り替える。
男は店内の全員に静かにしろと怒鳴り、近くにいた子供を引っ張り上げ…その子供の頭に銃口を突き付けた。
子供は泣き叫びながら両親に助けを求めるが…両親も下手な事が出来ずその場で黙って立つことした出来ないでいた、でもそれは仕方がない事だ…俺も脚が震え上がって頭が真っ白になった多分店内の全員が同じだった筈だ。
泣き叫ぶ子供は男に何度も静かにしろ、黙れと怒鳴られたが恐怖でパニックの子供にそんな言葉届く訳がない、それが極限状態の男の神経を苛立たせていく。
男が子供に突き付けた銃口を構え直す、その目は脅しではなく明確な殺意を宿している。

俺は気付いた時には体が動いていた。
犯人の視線は子供から突然動き出した俺へと移る、銃を俺の方へ向けるが咄嗟に蹴りが出て男の手から銃を蹴り飛ばした。
自分でも自分の行動に驚いたがチャンスだと思った、相手が丸腰ならきっと押さえ込めると…
男に組み付き押さえ込もうとするが必死に抵抗され中々思う様には行かなかった、そして少し組み付きが緩んだ隙に男は懐からナイフを取り出す。
『あ…』油断していた、最初の蹴りが上手く行き過ぎてまだ武器を持ってる何て考え及びもしなかった。
男は俺の腹に何度かナイフ突き刺した、血が流れる度組み付く力が抜け俺は倒れ込んだ。
痛い…寒い…
俺は薄れる意識の最後にサイレンの音を聞いた。
良かったあの間に誰かが通報してくれたのだと、微かな安堵の中で俺の意識は闇に溶けて消えた。

転生

俺は日の光りの眩しさで目を開けた。
何処だここ？森？俺何で森に？
そうだ、俺はナイフで刺されたんだと咄嗟に腹を押さえるがもう痛くはなくなっていた。
恐る恐る服をたくしあげ確認してみたが傷口などは特に見当たらずほっと安堵した…のだが……。
ん？今の俺の腹？
運動不足で緩んできていた俺の見慣れた腹じゃなかった様な…
少し立って見たが明らかに視線が低い、手も脚も短いというか…幼い。
俺は恐る恐る近くの水辺で自分の姿を確認してみると、幼少期の俺の姿が写った。
若返ってる…一体何がどうなってんだ…
呆然とただ水面に写る自分の姿を見ていると、後ろの茂みからガサガサと音が聞こえた。
俺は誰かいるのかと咄嗟に声を掛けたが返事はなかった、野生の動物でもいるのかと…ビビっていたが
茂みから放たれたのは矢だった、俺は脚を矢で射たれてしまう。
さっきナイフで刺されたのと似たこの痛みがここが夢の世界などではなく現実なのだと報せている。

動けなくなった俺を見て茂みの中から俺を弓で射った奴が姿を現す。
小柄で緑の肌剥き出しの牙はいやらしい笑みを浮かべていた。
(こ、これってあの、ゴブリン？？)
ゴブリン？は弓を俺に向けて構えた、俺は訳も分からぬまま、また死ぬのか。
そう思った瞬間だった…1人の少女が現れ魔法でゴブリン？を倒してしまった。
姿が変わって次にゴブリン更には魔法？？
これってもしかして…もしかしてだけど……異世界転生って奴ー？！

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