大切な人と生き別れている
異種族の友人がいる
己に何らかの誓いを立てている

人々を護るために

何処で産まれたかは知らないけれど少なからず自我が芽生えた頃には俺は島の研究所で育っていた。
そこで一緒に暮らす友達と日常を謳歌しながら。
日々打たれる薬の実験体として過ごしながら。
そもそもなんの研究をしているのかすら知らなかったけれど、
少なからず日々変わっていく研究施設に居る子の変化からまともな実験をしていないんだとは感じていた。

施設の中で出来た友人の一人が逃げだそうと言い出した。
逃げること自体には賛同したけれど普段から遊び場所として過ごしながらこの島は外界から離れていることは悟っていた。
それでもいつ死ぬか分からないこの状況で逃げだそうと言える友人の心の強さには感服した。
もう一人の友人が告げた。
逃げ出したところで捕まるのは明白、保護して貰うには証拠が必要だと。
あぁそうだ、この子達の親だと言い張ればこちらが否定をしようがいつかは連れ戻されてしまう危険性だってあるのだから。

だから俺達は最善の準備を行い脱走を計画した。
実験薬の確保、資料の強奪、兵器の作製。知識を溜めて実行した。
最初は上手くいっていた。
資料も奪えて己を守る力も手に入れて、後は逃げ出すだけだった。
けれど最後に失敗した、否、敵を侮っていたのだ。
資料の強奪に夢中になっている間に一人が捕まり追い詰められて...

友人の一人が逃げろと告げた。
誰か1人でも逃げ切れば計画は成功するからだろう。
けれど1人だけで逃げ切れば残りがどうなるかは明白だった。
だからだろう、捕まった友人は隠し持っていた爆弾を、マギスフィアを爆発させて自爆した。

その隙に私は、俺達は逃げ出して、泣きながら走って、隠してあったボートに乗って島を脱出した。
結果的には3人だった私達は二人になって逃げ切れた。
けれど嵐だった事もあり実験薬や資料は紛失した。

俺達は二人きり、浜辺に打ち上げられていた。

そこから右も左も分からなかった俺達はナイフ1つを片手に放浪しながら旅をした、生き残る為に果物を取り、動物を狩り旅人に道を訪ねながら。
お金は持ち合わせていない、そもそも稼ごうとも思わなかった。
痕跡から足取りを追われると思ったから。
先へ進み、進み、進み、それでも死なずに生き残ったのはかつての実験で驚異的な身体能力を手に入れていたからかもしれない。
身も心も限界まで酷使しながら旅を続けた。

逃げ出してから3年経ちそれこそ生活水準が一般的な旅人並まで高くなってきた時の出来事である。
偶然宿泊していた村で、かつて私達が実験されていたときの被害が出たのだ。
人々が苦しみだし死んでいく。
そして植物のように枯れていった。
彼等はメリアとは違うのだろう。
植物が人に寄生するように、一瞬で支配をしたのだ。

私達はそこで思い至ったのだ。
まだ敵は生きていてその脅威は残っているのだと。
友人も同じ事を考えていて、そして、互いに約束した。
互いに生き残ることを、そして脅威から人々を護ろうと。
誓いを建てた。

そこから5年の時が経った、世界を旅して回った。
友人との二人旅も8年も経てば慣れてくる。
旅先で起きる問題を解決しながら実験の産物の始末を行って、行って。
戦いはいつの日かあっさりと終結した。

これであの子の無念は晴れたのだろうか...
疑問は残りながらも俺は...
自由に生きるを選んだ。
だってこの世界は未だ驚異が残っているから。
手に届く範囲の人々を護る為に。