魔導の学府へ入学したての頃、私の臆病な性格のせいで、周りに馴染めずにいた。
入学から数日が過ぎても友人0人……流石に自分の性格を呪った。

　周りを見るといくつかのグループが既にできており、
何度か声をかけようとしたが、あと一歩ところで声が出ない。
声をかけても、声が小さすぎて気付いてもらえないことさえあった。

　とある休日、共に過ごす友人がいない私はお気に入りの花畑で昼寝をしていた。
どうして私はこんな性格なのか、あと一歩踏み出せないのか。そんなことを考えながら眠りについた。

　目が覚めると、隣に知らないエルフが眠っていた。
状況が理解できない私は思わず立ち上がり、距離を取る。
その音で目が覚めたのか、エルフがむくりと体を起こす。

「おはよぉ……ふわぁ……」

これが私とチェリー＝ブロッサムの初めての出会いだった──

◇◇◇

　目を覚ました彼女に対して警戒心を露わにしていたが、どうやら彼女も魔導の学府の生徒らしく、
聞いてもいないことをベラベラと話し続けている。
今までこんなに話しかけられたことは経験がなく、少し困惑していたが、
彼女から花に関する話が出てきた瞬間私はその話に飛びついた。

　花に関する話をきっかけに話が盛り上がっていき、気づけば夜になっていた。
その日はお互いに自己紹介も済ませ、連絡が簡単に取れるようにしておいた。
私にとって初めての友人ができたこの日を記念日として名前を付けようか、そんなことを考えながら帰路に着くのであった──

◇◇◇

　魔導の学府内で買い物をしている途中、チェリーを見かけた。
声をかけようと思ったが、どうやらパーティメンバーとこれから任務へ向かうようだった。
この前話したときはパーティに所属しているとは聞いていなかった、しかも「迷宮の灯」のメンバーだったなんて。

　陰からチェリーの様子を見ていると、パーティ内で討論しているようだった。
何を討論しているかまではわからないが、あの怖いリーダーらしき人に物怖じせず話しているではないか。
その様子を見た私は、私に足りないものをチェリーは持っている。チェリーのようになりたいと思うようになり、
チェリーに対して"憧れ"の感情を抱くようになった。