容姿・経歴・その他メモ

身長

177

体重

70

髪

ブロンド

瞳

青

肌

白め

経歴

異種族を怖がっている（いた）　

エルフの女性。友達になったエルフによって魔神の生贄にされた。またそこから救出し、後見人となってくれた人物がかなりのスパルタで、奇しくも彼女もまたエルフだった。

告白されたことがある　　

友達になったエルフから。

魔神の生贄にされた（されそうになった）ことがある　　

珍しいナイトメアを見て近づいてきた狂信者に謀られた。

理由

まだ見ぬ世界を見るため　　

生来、見たことのない景色を見ることが好きだ。見聞を広めるように、という師の言葉もそれに重なっている。そのためには、冒険者の身分はうってつけだった。

テラスティア大陸はルキスラ出身のナイトメアの青年。

幼少時に捨てられたため、実の親の顔を知らない。育ての親からはある程度愛情を注がれたが、兄弟とはあまり仲はよくなかった。
シモン自身もそんな彼らに対し疎外感は拭えず、家にも、そして町にも思うように馴染めなかった。
そんな彼の関心が内ではなく、もっと外の世界へと向かっていったのはごく自然なことだっただろう。


「どうしてひとりでいるの？」「今の居場所に馴染めないのね…」「それならわたしと一緒にいましょう」

10歳の頃、シモンはエルフの少女、「アシュリー」と出会った。自分と同じ金髪蒼眼で、すこし儚げな印象を受ける少女。
偶然、自分の姓と同じ名を持つ彼女に不思議な縁を感じたのだった。
彼女は家族と旅のように各地を転々としていて、この町に住んでまだ間もないという。旅で様々な人と関わった経験なのか、彼女はナイトメアである自分を差別せず、普通に接してくれた。ふたりはすぐに仲良くなった。
アシュリーは見かけの割に身体がよく動き、シモンと同じくらい活発だった。野を駆け、川を臨み、雨にぬれた。

しかし、過ごす時間でシモンが最も好きだったのは、彼女の語る話を聴いているときだった。彼女は話術が達者で、引き込まれるように聞き入った。
そのほとんどが旅の話だったが、いつも共通して、ひとつだけ奇妙な点があった。
それは、アシュリーのお父さんもお母さんも、全く話に登場しないのだった。それとなく訊いてみても、両親はちゃんといるようだったが、それ以上話してはくれなかった。
そのうちシモンは「話に無関係だから省いているのか」と解釈するようになった。自分の興味はあくまで彼女と彼女の話だったからだ。そんなことよりも彼女の物語に耳を傾けたかった。それは少なくともシモンにとって、どんな冒険譚よりも鮮烈で、どんな冒険の記録よりもリアルに感じられたのだった。

そうして、1年か、それよりもっと長い時間を共に過ごした。たくさん遊んだ。お互いの好きなものの話をした。たまにけんかもした。


「どうして俺と遊んでくれるの？」
「変な質問。そうね…話しかける切っ掛けは、あなたがひとりで寂しそうに見えたからよ」
何度目かの仲直りのあと、ふと尋ねたのだった。
「だって俺は…」
「今ここにいるのはナイトメアとエルフじゃなくて、あなたとわたしなの。それじゃいけない？」
「う、うーん…よくわかんないかも」
「少なくとも、あなたはあなたよ」

アシュリーは年相応の天真爛漫さとは裏腹に、時折同年代と比べてもかなり大人びた一面を見せた。
彼女の考えが正しいのか、それとも間違っているのかシモンにはわからなかった。だが、そのどこか達観したような物腰は勇気と安らぎをくれた。遠慮がちだったシモンを明るく変えたのは紛れもなく、彼女の言葉だった。

いつも言えないお礼を今日こそ言おう、そう決心した次の朝―――彼女は姿を見せなくなった。

町で人さらいの噂が囁かれ始めたのは、その少し後からだった。




「急にいなくなってごめんなさい。家の仕事でどうしてもやらなきゃいけないことがあって……」
1ヵ月後、アシュリーは突然帰ってきた。
「あのね、どうしても一緒に来て欲しい場所があるの、ひとりじゃ行けなくって」

まったく話の流れは読めないし、突然戻ってきて驚いたが、それよりもなによりも、再会できた喜びがそれを上回った。しかし、いつかの「お礼」を言えるタイミングではないことはすぐにわかった。意を決したような彼女の表情を見て、シモンはすぐについていくことを決めた。そのときの原動力はおそらく、好奇心ではなかった。

「おうちの仕事がひと段落ついたから戻ってきたの？」
「えぇ、そんな感じ」
「よかった…俺はてっきり…」
「ひとさらい？本当に心配していてくれたのね…大丈夫よ。」

連れて行かれたのは町はずれにある、アシュリーの住処らしい屋敷だった。
「話をつけてくるから」彼女はひとり屋敷へと入っていく。
門前で待つことになったシモンは屋敷の外観になど目もくれず————屋敷に着く前からずっと、考え込んでいた。
彼女はいつもと変わらないように見えて、何かが違う―――この頃、シモンはある疑問を抱いていた。知り合ってそれなりに経っているのに、彼女の周囲についてほとんど知らない————殊に、彼女の家族のことだった。

結局今日まで、話中でアシュリーの家族について、一度も語られなかった。それどころか、それ以外の会話の中でさえ、彼女自身あまり家族について話したがらない様子だった。芽を出した小さな疑念と違和感は徐々にシモンの心に根を張っていて、知らず知らずのうちに大きく育っていたのである。

(なぜ家族について何も話さないのだろう？話すこと自体を避けているようにすら思える…最初は家族と仲が悪いのかと考えたけど、多分そういうわけじゃない。じゃあ…)
ひどく胸騒ぎがした。

あれこれ考えていると、ふと肩を叩かれた。
「ごめんなさいね、もう入れるわ」彼女が戻ってきたようだった。
深く思考に没頭していたからか、彼女が屋敷に入ってから戻るまでに、時間にして10分近くが経っていたことにも気が付かなかった。

屋敷に入ると応接間に入――らず、そのまま通り過ぎていく。広い廊下を、無人の食堂を、客室の前を、ダンスホールを、屋敷の端から端までというほどの距離を移動した。

どこに向かっているのか、という言葉は発せなかった。
彼女に会話を試みたのは初めのうちだけで、その後すぐに彼女が会話を拒んでいることを理解した。並んで歩く二人の間にあったのは、これまでに一度もなかったような寒々しさだった。

屋敷内では誰ともすれ違わなかった。そこそこの大きさの屋敷であるのにも関わらず、だ。
彼女の家族はもちろんのこと、使用人すら、ただの一人もいなかったのである。もはや本当に人が住んでいるのか？そんな疑問を抱くほどの静寂が館を支配していた。
その異様さに気づいたときにはすでに、地下へと足を踏み入れるというところだった。もう引き返すことは叶わないようだった。

石造りの螺旋階段を降りていく。階段はそれなりの幅があり、変わらず並んで歩いた。静かすぎる空間にカツ、カツ、と二人の靴音だけが響き、いつの間に持っていたのか、ランタンの灯りが無機質な石を照らしてゆく。
階段下まで着くと、そこには鉄扉がひとつあった。
おもむろにアシュリーはランタンを差し出してくる。黙って受け取ると、彼女はスカートのポケットから鍵の束を取り出した。
鍵を開けるのか、と彼女の方を照らすと、シモンの方を一瞬見て、鍵の方に視線を戻した。視線が合ったときの表情は悲しみを湛えていたように見えた。
「何も聞かないでここまで来てくれてありがとう」
唐突にアシュリーが口を開く。声色は震えていた。
「こんなこと今までなかったから…それよりその、大丈夫？何かあったの？」
震えた声を聞いて聞かずにはいられなかった。
「ううん、大丈夫だから…気にしないで」
彼女は一瞬ぴくりと反応した気がしたが、その直後立ち上がった彼女はいつもの表情に戻っていた。悲しい表情は気のせいだったのかもしれない。そう思い直して、シモンはアシュリーに背を向け、鉄扉をランタンで照らした。
「それはそうとして、ここって一体どこ？こんな広い屋敷に入ったのは初めてなんだ」
「ここ？ここはね…大好きな部屋よ」
言葉の意味がよくわからなかった。
「大好きな部屋？」
「そうよ。だからもっと大好きになるの」
がこん、と異音が室内に響いた。
シモンの心臓が脈打つ。自分のした嫌な憶測は当たっているのか、と脳が巡り、
「…もしかして、君の家って泥ぼ―――」
振り返って口にしようとした瞬間、



ドンッ！！！！


思い切り背中を押された。
鉄扉にぶつかると、そのままの勢いで押戸が開いて真っ暗な中へと押し込まれる。
突然のことで、ほとんど反応できないまま扉を閉められ、外から鍵をかけられてしまった。
扉の鍵は最初から開いていて、鍵を探すのはシモンに不意打ちを仕掛ける機を伺うための芝居だったのだ。
「…は……？アシュリー!アシュリー!!」
ドンドンと扉を叩いてもびくともしない。取っ手はついておらず、内から開けることは想定されていないようだった。
「…泥棒なら…どれだけよかったか」
消え入りそうな声を最後に、アシュリーから返事は返ってこなかった。

幸い、アシュリーから渡されたランタンのおかげで、狭い室内を見渡すことはできた。石造りの壁で、部屋には何も置かれておらず、右手に通路があるだけだった。
(進むしかないのか…でもアシュリー、どうしてこんな…)
ランタンの燃料も有限で、ここで悩んでも事態が好転しないことは明らかだ。シモンに残された道はひとつしかなかった。

通路は一本道だった。壁には松明が時折かけられていたが、どれも火は着いていなかった。
ひとつ角を曲がると、少し先に灯りがふたつあった。近づくと火が灯った松明で、そこにはまた鉄製の両扉があった。
「行くしか…ないか」
意を決して扉を開ける。




そこにはかなり広けた部屋が広がっていた。壁にいくつも掛けられた燭台の火が部屋全体に光を与えていた。
部屋は赤かった。だがそれは火がもたらしたものでも、ペンキでも、まして絨毯でもなかった。

「……ッ！！？？」

それらは全て血液だった。床にも壁にも、そしてあまり高くない天井にまで一面というほどのおびただしい量が赤黒く塗られていた。
まだ乾ききっていないものがあるのか、むせ返るほどの鉄臭さが立ち込めていた。

(おえっ、吐きそう…これは一体なんなんだ…？なんでこんなものがある？)

予想していた展開と全く異なり、茫然とただその場に立ち尽くす。
地上にすこし近づいたからなのか、まだ温かい鮮血が壁に塗られているからか、室温がさきほどの通路より少し高かった。
どこに視線をやっても異様であり、シモンはたちまち吐気を催してしまった。
蹲っていると、カツ、カツと聞き覚えのある足音が響いた。自分が来た道の他にも入り口があるようで、そのあとにまだ別の足音が続いているようだった。
「また会えたわね、シモン。」
ひどく落ち着き払った声がした。

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