容姿・経歴・その他メモ

【サイレックオード経歴表】
■マルズ宮殿の中庭に入ったことがある
■行政区分記号１－１(トップハイ)を歩いたことがある
■適空種を見たことがある
【ヴァグランツになった理由】
■平和を求めて


サイレックオード発見者であり再興した功績を持つ稀代の冒険者である、マルズ・ゴベリアリ。
リオラグルは彼がサイレックオード再興を手がけていた時から仕えていた、執事のひとりだった。

百余年、ゴベリアリ家に仕えてきた。統治能力に乏しく軍事強化に執心するゴベリアリ家…それでも奉仕する者の責務と愛すべきサイレックオードの地を再興させた立役者への敬愛から、胃薬を絶え間なく飲みながらも責務をこなし続けた。

だが、それの限界が訪れたのは現伯爵位であるマルズ・ゴベリアリのお世話があまりにも負担が大きかった故だった。
政治に興味を示さないだけならばまだいい。歴代伯爵もそうだったから。練兵場に通い詰めで常々怪我を負ってくるのもまだいい。後述する問題に比べたら余りにも些細なことだ。
だがマルズの最大の問題は、その股の緩さにある。ところ構わず女を抱いては孕ませ、子どもを産ませては認知する。マルズの子どもは日に日に増え、宮殿に迎え入れた数十人の子ども…並びにその母親たちへの対応は、余りにも忙しければ精神的負担も多く、そしてやりがいも無かった。特にヘンリカ・ゴベリアリに実質的に無理やり親権を奪われた母親たち…彼女らへの救済として、悲嘆や暴言のはけ口になることを担っている時は胃潰瘍との戦いでもあった。
時にはマルズが勝手に宮殿に招き入れ、女を抱いた後の後始末もすることがあった。あの情事の後の独特の臭いと湿り気にウンザリしながら処理をした日には、食欲も失せて食事を抜いたりもして。

そんな胃腸に全く優しくない生活を送っていたら、すっかりやせ細って周囲へ心配をかけてしまうほどだった。

そんなある日のこと。
とある所用により、ゴベリアリ家からサイレックオード評議会への書簡を届けるためにガザトオリコへ訪れた際。その書簡の受取人であるハンスベル・ラフィンと短くやり取りをすることがあった。
ハンスベルとは親しい仲とまでは行かなくとも、お互い共感するところがあった。主に苦労人という点で。
それで少しだけ、世間話に花が咲いたタイミングで騒動が起きる。ヴァルチャーの適空種の群れが、サイレックオードに襲来してきたとのことだった。

リオラグルもゴベリアリ家に仕える者として、戦闘の心得がない訳では無い。取り立てて先陣を切って敵を引きつける役目は、激務で体力が落ちても技術として失われるものではなかった。
星座の心臓の冒険者も加わり、皆で協力して適空種を退ける。ハンスベルとも同じく戦えたその時間、リオラグルは久しぶりに心地よい連帯感を得ることが出来た。

適空種を退けた後、ハンスベルから「いい顔をしていた」と評される。不謹慎ではあるが、自分でも驚くほど楽しい時間を過ごせていた自覚はあった。
祝勝会として、星座の心臓に招かれる。マルズはどうせリオラグルがいなくても気にもとめないと、一夜だけの解放感に身を委ねることにした。

そこで、リオラグルはハンスベルと対話する。
もう充分尽くしただろう、好きに生きてもいいんじゃないか。
無責任ともとれる言葉、だがハンスベルの口から放たれたそれはリオラグルの中に自然と染み込んだ。これ以上この身を削って献身するほど、ゴベリアリ家に忠義も恩義も残ってなどいない。

酔った勢いもあるのか、それか先程の書簡の内容が気に入らなかったのか。ハンスベルはリオラグルの脱走の手引きをしてくれた。放浪者として旅立つ身支度は、星座の心臓であれば容易く整う。
次の朝日が昇る前には、リオラグルはサイレックまで降り立っていた。

そのままサイレックオード街道を歩く。
天蓋を抜けた頃に、朝日が昇る。
天上のサイレックオードではなく、地上から見る朝日はとても綺麗で、そして清々しい気持ちにさせてくれた。

もう、爛れた人間関係なんて真っ平御免だ。
これからは第2の人生を歩むんだ、と意気込んで。
リオラグルは荷物袋を背負い、歩を進めた。

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