容姿・経歴・その他メモ

【経歴表】
■魔剣の迷宮で迷子になったことがある
■本から大きな影響を受けたことがある
■絶対に知られたくない秘密がある
【冒険に出た理由】
■予言によって


銀狼のリカントであるルガロゥの祖父母は、魔法の才が無いことで差別的扱いを受けていた。その結果、どのように今いる住居…西区の貧民街で過ごし始めたかは知られていない。だが、このユーシズではそう珍しくもない話だった。

ルガロゥは幼いころからユーシズの街ではなく、コロロポッカの森で身体を動かし遊んでいた。無垢で無邪気で、天衣無縫を体現したような子供だった。器用に木登りをして、素早く森の中を駆け巡り、小動物を追いかけ、野生動物からは全力で逃走する。
毎日が楽しかった。街では貧民街に住む友達もたくさんいたし、差別的扱いを受けても気にもならなかった。
古い英雄譚や冒険譚を子供たちみんなで読み回して、人並みに冒険者や英雄に憧れてもいた。とにかく、まっすぐに育った少年だった。

転機が訪れたのは、ルガロゥが成人して間もなくの頃だった。
活動範囲が広がったルガロゥはその日、コロロポッカの森を南西に抜けてしまった。貧民街と、それから森の中しか知らなかったルガロゥにとって地平の果てまで広がる草原は感動を覚えるものだった。背の短い黄緑色の草っぱらを、獣変貌して駆け巡る。憚ることなく吹く風が気持ちいい、人生で一番幸せな時間だった。
---------その時間はあっという間に終わってしまったが。

「フィーッシュ！！心身ともに真っ白キャンパスくんヒーット☆」

ルガロゥが聞いたこともないような声だった。善意も悪意も感じないのに、酷く楽しそうで恐ろしいようなそんな声。
聴覚と同時に視覚も働かせれば、草原ではなく舞台の上、そして観客の波。
さらに声の元を見れば、サングラスをかけてニヤニヤと笑みをたたえたナイトメアの男。
何が起こったのか、混乱している間に…ルガロゥの心身は弄ばれた。歓声の中で、ルガロゥは媚声と悲鳴をあげ続けた。

いつの間に意識を失っていたのか、気が付いた時にはコロロポッカの森とユーシズの境界線の辺りで、木を背にしていた。空を見上げれば夜になっていて、どれほどの時間をあの場所で過ごしたのか思い知る。
夢、とは思えなかった。全身を這うような悍ましくも心地よい刺激が、今だ残っているような気がしたから。
何があったかなんて誰にも言えない。ルガロゥはすっかり警戒心を植え付けられ、まるで野良犬のように拙く威嚇するような態度を周囲に取るようになってしまった。
こんな経験をしたことなど、誰にも悟られたくなかった。

忘れたいのに、忘れられない。それはこの記憶がただ苦痛だけを伴うものではなかったから…むしろ苦痛自体はなかったから。
このままではいけないと、森を駆け回る。友達とは会わないようにして、ただ纏わりつくような感情を昇華させようと我武者羅に身体を動かし続けた。そしてこのやり方が一番、忘れるのに適していると感じた。

「お前は冒険者が向いてるかもなあ☆」

いいように弄ばれながら受けた、夢につながる言葉。こびりついて離れない。
この声に従っては忘れられなくなる未来しか見えないのに、他の道はもう考えられない。
くそ！と誰にでもなく悪態をついて、ルガロゥは地面を叩いて立ち上がる。

---------俺は、自分の意思で冒険者になる。そしてこの忌まわしい記憶を払拭してやる。
動かないより、動いた方がいい。
ルガロゥは苛立ちを抱えたまま、ユーシズの冒険者ギルドを訪れるのだった。

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