彼女の生まれた場所は、小神である【情報遺失】を信仰する村であった。
その神は実験と略奪を生業とする悪神であり、人族のみならず蛮族の間でも異端視されていた神であった。
自然と、この村の住民は人族・蛮族社会から放逐された者が集まり、周囲の集落に対し襲撃や略奪を行っていた。
アルタミラの両親も例外ではなく、アルタミラを強い兵士(どうぐ)とするべく実験を行っていた。
ある日アルタミラが両親から逃れて村の外れに行くと、自分と同じような境遇のエルフの少女に出会った。
アルタミラは彼女と仲良くなり、多くのことを話し、将来村から逃げて2人で暮らすことを誓った。
そして月日が経ち、ある夜アルタミラはエルフの少女から「白いノート」を託された。
「事情があってしばらく会えなくなりそうだから、預かって欲しい。」…翌日、彼女は実験の失敗により亡くなった。

アルタミラの村が襲撃を受けたのはそれから数か月後のことであった。
村の住民は全員戦いに駆り出され、アルタミラも戦線に向かった…が、アルタミラは村を守らなかった。
逆に住民を襲い、両親を手にかけ、襲撃者ごと村を焼き払い去って行った。
襲撃が行われること、住民との戦い方、村の焼き方。全て、「黒いノート」に書き込まれていた。

全てから解放された彼女は、晴れやかな様子で森を歩み…次にするべきことが無く途方に暮れていた。
その時、アルタミラはふと「白いノート」の存在を思い出した。
『「白いノート」を思い出でいっぱいにしようね。』エルフの少女の言葉が脳裏に浮かび、アルタミラは次にすることを決心した。