幼いころから教会で過ごしてきた彼女にはいくつか特技がある。
それは、赤ちゃんのあやし方からおしゃべりな人の話し相手から、早く楽に木を登る方法だったり、聖印のデザインの見分け方だったり、毒を受けた時の耐え方など様々だ。

もちろんもっと使いどころのある特技なども持っているが、あまり進んで表に出すことはない。

彼女の趣味は二つある。一つは聖印集めで、もう一つは草花のしおりを作ることだ。
村の周りや出先などで見つけた気に入った草花を採取し、どこで取れたとかどんな匂いがしたとか、食べられるものなら味も残し、自作の図鑑を作ることを趣味としている。
もう一つは聖印集めで、アステリア様の聖印はもちろんのこと、ほかの神々の聖印も集めている。
理由はアステリア様の色々なデザインの聖印を集めているうちに、ほかの神様の聖印のデザインも気に入り、カッコよさや可愛さという理由で買い集めている。

一番お気に入りの聖印はアステリア様のもので、今も頭に身に着けている天使の輪のような聖印。

ブルライト地方にある村「ルミエール」生まれ、育ちもこの村。
彼女は生まれてこの方この村から一人で遠出することはなく、両親と共に近くの街に行ったり、友人たちやナーシャと一緒に村の外で依頼をこなすことくらいで、いまだ世界の広さを知らない。

だから、彼女はナーシャから冒険の話を聞くのが好きだった。
中でも好きなのが、旅先での料理や絶景の話だ。
彼女はそこでの話を聞いて、いつか自分の目でナーシャの見てきた景色や味わった料理を食べ、自分でも新たな経験を積んで、そうして旅をしていつかその話をナーシャに聞かせるのが夢になっている。

しかし、彼女はその旅の一歩を踏み出せずにいる。
ナーシャの見てきた世界を自分の目でも見てみたい。けれど、それと同じくらい村の外が怖い。
今まで魔物との戦闘の経験もあった。けれど、それはみんなで一緒に…何よりナーシャと一緒だったから。
でも、旅をすればナーシャはいないし、友人たちも一緒にいられるとは限らない。
旅の途中で死んでしまうかもしれないと。

そんな思いを抱えながら、今日も彼女はナーシャの指導の下訓練に励む。
いつか旅経つ勇気がくるその日まで。

彼女の師匠は元冒険者の「ナーシャ」だ。
彼女の指導は厳しいし、痛いこともあるし、大変で辛く泣くこともあった。
けれど、彼女はナーシャを恨むことはなかった。
普段のナーシャが優しく、訓練の時に厳しいのは自分達のためだとわかってるからだ。
それに、ナーシャの話も好きだし、両親と同じくらいナーシャのことは信頼し、尊敬している。

だが、厳しい訓練に耐えられたのは彼女が真面目な性格だからでも、村のためでも、ましてやナーシャが好きだからではない。
一番の原動力はナーシャのことをいつか見返してやりたいと思っているからだ。
その為に、今日も厳しい訓練を頑張る。

彼女の母親はこの村にある教会を代々受け継いでおり、父親もそこで働いている。
その為、彼女は幼いころから教会で過ごすことが多く、両親から様々な知識を教えられてきた。
教えられたことはしっかりと学び、サボることもなかった彼女は今では立派な聖職者として働けるほどの実力を持っている。
ただ、将来この教会を継ぐかどうかは決めかねている。
家が継ぐのが嫌なのではないのだが、旅をしたいという気持ちがあるし、姉もいるため無理に引き継がなくても問題ないからだ。
それでも、ちゃんと聖職者として勉強をし続けているのは彼女の性格故。

家族中は良好で、両親に甘やかされながら育っている。
姉との仲もよく、時折喧嘩はするが尊敬する一人でもあり、いつかは姉に自慢できることを成し遂げたいとも考えている。

彼女は人から見下されるのが嫌いだ。
物理的に見下ろされるのも、なめられるのも嫌いで、そういうことをする人には噛みつくし、いつか見返そうとする。
いつも頭を撫でてくる姉の身長を超えて、撫でてやりたいし、いつも負けるナーシャにも勝ちたいと思っている。
ただ、仲のいい人や尊敬する人からのそういう扱いは別に嫌ではない。見返したいとは思うが。
とはいえ、村人にも嫌な人はいないため、少し噛みつく程度。
それでもやっぱり上から見下されるのが嫌なので、教会の外ではいつも高いところに陣取ろうとする。
ナーシャとの訓練やいつも高いところに登っているおかげで、見た目の割にすごく身軽。
ただ、避けるのと上下方向への移動が得意なだけで、走るのはすごい苦手。

外に行くときは必ず騎獣を連れており、それは騎獣がいれば、舐めてかかる人は減るし、騎獣に乗れば見下されることも少なくなるからだ。
そのうえ、自分を守ってくれる護衛にもなる。
ただ、盾のように扱うのではなくちゃんと仲間の一人として大事に扱っている。

一人称:私　二人称:～様　喋り方:丁寧語
性格は真面目で努力家。常に自分が有利でありたいと思っており、負けたり舐められたらいつかは見返してやると負けず嫌い。
感情はすぐに表に出るし、後方から人を動かしたがったり、人を煽ることはある子供っぽい性格はあれど、教会のシスターなだけあって優しく人を馬鹿にすることはしない。

痛みに敏感で、人が痛がるのも自分が痛いのも嫌っている。
それは、普通に痛いのが嫌で、死にたくないからというのもあるが、教会で暮らしていると怪我人や病気の人を見る機会が多く、蛮族との戦いや狩りでもそういう場面に出くわし、治療をしたりその手伝いをし続けたことで、人の痛みにより多く触れたためだ。

ただ、死にたくないと思っていても死そのもの自体は恐れてはいない。
それは、神官であるため、神様を信じているからだ。

また、いつも口元を片手で隠しているのは、半分は母親の真似から始まったが、もう半分はあまり人に口の中を見られたくないからだ。
彼女の両親は人間だが、父方の祖父にリカントの血が混ざっており、隔世遺伝で歯がギザ歯になってしまい、周りと違うこの歯を少しコンプレックスに思っているため、常に口元を隠している。