容姿・経歴・その他メモ

【経歴表】
■家族から探されている
■かつて信頼できる友人がいた
■商売を手伝ったことがある
【冒険に出た理由】
■自由のために


アベルは冒険の国グランゼールで、元冒険者一家の次男坊として生まれた。
この国は各地から冒険者を志す者、外交を行う者、様々だ。
アベルの家族は冒険者を辞めた後はその伝手を使って商家を営んでおり、アベルの兄もその道を志していた。
しかしアベルはその生き方が性に合わず、そして困難を恐れない胆力を持っており、成人を迎えた直後、家出同然にグランゼールを抜け出した。

当然、世界はそう甘くはないが。アベルには世知辛い世間を渡る才能と、家にいる間に知らず学んでいた渡世術で生き残ることが出来た。
グランゼールから出た後は荷馬車に乗り合い、掃きだめの魔動死骸区へ。痛い目を見つつも、アベルは無法者として一定の立ち位置を確保していた。
剣術は独学。交渉術ははったり。時には地べたに頭をつけることだって厭わなかった。
そうして生き延びたアベルは、掃きだめの魔動死骸区では少し名の知れた存在になっていた。

良く仕事を共にしていた、"カイン"というアルヴの女がいた。
油断ならない女で、最初はアベルの蓄財を狙って近づいてきていたが、アベルの多くはない蓄財よりともに稼ぐ金の方が美味いと判断したらしい。
お互いの利のために手を組み、危機を乗り越え合った。間違いなく、アベルにとってカインは信頼できる友だったし、カインにとってもそうであると信じていた。

そんな時に、錆拾いの人間の男を拾った。取引に使ったんだったか、それとも偶然同じ魔動機に襲われたんだったか、有象無象蔓延るこの魔動死骸区で出会いのきっかけなど一々覚えていられない。
ただ、錆拾いにしては腕っぷしがあって面倒な話がなく、後ろ盾もないから騙すことはできても騙される心配はないその男…"ヨウ"も、いつの間にかアベルとカインの仲間に加わっていた。ヨウは不愛想な男だったが、共に過ごす間に少しずつ変わっていった。言葉に出来ない連帯感、所謂絆を薄からず感じるようになっていった。

そうやって独りでは得られないものを、得てしまった弊害なのだろうか。カインとヨウに無条件で心を許している自分に、無自覚だったのだと後からアベルは思う。
カインが、裏切った。大きな仕事を進めていた時に、それまで得ていた成果を持ち逃げしていった。
実績が信頼となる無法者の世界、裏切りに満ちているこの世界は、ひとつの失態を命で支払うこともある。この仕事の失敗による落とし前も、カインだけが成功報酬を得ていたのだからアベルとヨウがつけることになる。

アベルはヨウと共に、逃走した。今回の仕事は大きい分、魔動死骸区の中に居ればまたいつ狙われるか分からない。
だから魔動死骸区から出て、魔動死骸区以上に頼りない外の世界へと飛び出した。
アベルは憤った。それは、この掃きだめの魔動死骸区で必要以上に相手を信頼してしまっていた自分に対してだった。なんて情けない体たらくだと思ったし、カインに自分たちを裏切った落とし前をつけさせてやりたいと、怒りの矛先を裏切者に向けようともした。
だが、傍らのヨウは嘆いていた。アベル以上に、物の道理を分かっていない、その楽観的な姿にも腹が立った。どんなに嘆いたって、カインは戻らないというのに。

アベルは、どこでも良かった。その怒りを、ヨウに向けても良かった。だから、アベルとヨウは自然と大喧嘩をした。

それが終わり、怒りが発散されると、なんだかバカバカしくなってしまった。
遠くに見える魔動死骸区を見遣る。あんなボロボロの街で上手く立ち回っていたつもりになっていた自分が、情けない通りこしていっそ滑稽だった。
黄昏時の夕焼けが、やけに壮大に見える。いっそこれからなんだって始められる気がした。

これから、どうする。
アベルが未来を問う。
どうにか、生きてく。
ヨウは曖昧な、しかし前向きな意思で応える。

――――なら、冒険者になってみるか。

かつて両親がしていたという、冒険者という道。どこまでも自由だったと、楽しそうに話していた記憶がある。
ならばなぜ不自由な商人をしているのだと訝しんだものだったが、一度自由を知るのも悪くないと思った。
そして2人は歩き出す。掃きだめの魔動死骸区から北へ、新たな人生の歩むために。

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