白い髪で線の細い、凡そ戦えそうにない少女。

　感情豊かで物腰柔らか。
　とても丁寧な話し方をするが、心を許した相手には砕けた話し方をする。

　努力/肯定：運命/肯定

　どんな時も礼節を失わない/食べ物に目がない。

　ラクシアの何処かにある彷徨の塔でディーンと目覚めた少女。目覚めた時から記憶喪失であり、自分の名前くらいしか思い出せなくなっていた。
　自分が何者なのかを知るためにディーンと共に塔を登る。
　名前の由来は聖大致命女エウフェミアから。

　私には肉親がいませんでした。正しくは覚えていません。物心ついた時には独りで生きていました。
　護るべき人がいました。大切な人だったと思います。でも、私はその人を守れたのか覚えていません。

　私は許されない愛を持っていました。その人は献身的に私を支えてくれました。でも、今はその顔すらも思い出せず、何が許されなかったのか今ではわかりません。

　私は何かに絶望していました。ただ朽ち果てていくだけだった私に手を差し伸べてくれた人がいました。「一緒に来なさい。」冷え切った私にはその声と手はとても温かく感じました。
　私は期待を裏切りました。間違いを止めることもできず、かと言え間違いに手を染めることもできない自分に嫌気が差しました。
　私は大切な約束をしました。全てを裏切っても、全てを捨ててでもその約束は果たさないといけない。そしてその約束は果たされました。

　私は物語の英雄に憧れました。誰かにとっての光や道となるその存在に憧れました。大切な人は応援してくれました。そして、私に贈り物と応援の言葉をくれました。「あなたならきっとなれる」と。
　私はこの世の酷薄さを呪った彼女に私は救済を約束しました。いつかきっと彼の語った「あらゆる時代に行ける運命を変える塔に行き、彼女を救済する」ことを。

　ザルツ地方フェンディル王国のフラーゲン出身。孤児であり、両親の顔を知らずに育ったがある時、運命に出会う。
　運命———、フランツ・トムリッツとその孫娘ローザライン・トムリッツによって居場所と教育を与えられ、仲間たちと共に幸せな日々を送っていたが、フランツの死によってその幸せは崩れ去る。悪徳な金貸しヘルムートによって、ローザラインと子供たちは家と財産を奪われてしまい、ローザラインは路上生活をしなくてはならず、慣れないそれによって病気を患ってしまう。
　病気を治すため、薬を盗もうと一部の子供たちは行動しようとしたが、エウフェリアは動けずにいた。
　「人から物を盗むのは悪である」「でも盗まなければローザは死ぬかもしれない」
　結果として、エウフェリアは動けず、子供たちは衛士によって殺されてしまい、ローザはその事実によって精神すら病んでしまう。結局、エウフェリアは聞こえない手の聖印を歪むほどに握りしめ、祈る事しかできなかった。神は答えず、そして、ローザが死に瀕し、この世を恨むことを言うほど歪んでしまった時、フランツがよく言っていた「彷徨ノ塔の話」を思い出し、そこで運命を変えてローザと仲間たちを救うことを約束する。
　幾年かの血の滲むほどの努力を経て戦勝神の恩寵を賜り、未探索の遺跡を探索し、隔世ノ羅針盤を探し始めた。
　————そしてその願いは此処で叶った。ローザの笑顔を見て、みんなの幸せな日常を見て、エウフェリアという少女はやっと救われたのかもしれない。
　そんな幸せな世界を捨てて、彼女は塔を登る。自分勝手だと言いながらも他者の為に尽くす捻くれた青年の結末を見届ける為に。或いは、ローザや仲間たちに誇れるような新しい自分を探すために。

　エウフェリアの真の正体、それは異なる運命のディーンである。
　"紡糸の女神"エルピュセは様々な偉業を成し、人々の信仰や、その無窮の鍛錬の果てに、神の階に触れ神格を持ったディーン。彼は蛮族の脅威が去れば争い合う人々に辟易し、破壊神に堕ちたディーンを惜しんだ。破壊神へと至る定めを変えるためにエルピュセは破壊神ディーンを眠らせ、彷徨の塔を創り出し、堕ちる前のディーンを運命から呼び出し、記憶を奪った。その際の様々な可能性の内の一つそれが"贖罪の聖女"エウフェリアである。
　エウフェリアは〈約束〉の運命を辿ったものであり、最も知恵に優れた可能性である。反対に〈家族〉の運命を辿ったディーンは武勇に優れており、全てを兼ね揃えた破壊神を打破する為のイレギュラーカウンターとして召喚された。
　しかし、これによって誤算が生じる。召喚されたディーンは本来は1つのみ。その魂が半分に分たれたことにより、ティムを倒して神の階に触れて超越者になることができなくなった。神は神でなければ打ち倒すことはできない。超越者至るためにはどちらかの運命を殺してひとつに統合するしかないが、ディーンが選んだのはーーー、

　私は恵まれていました。物心ついた時から両親が居なくても、貧乏で楽ができない生活でも、ともに苦楽を分かち合える仲間がいたからです。でもそれは結局、渓谷に架かる忘れられた橋のようにあやふやで覚束無い生活でした。
　フランツさんが死んでから、ヘルムートという金貸しがローザを脅すようになりました。「金を払えなければ屋敷をよこせ」と。
　そうです。当たり前のことです。フランツさんは私たちを養っても誰かがお金を融資してくれるわけじゃない。ずっと彼らは損をしていたのです。私は賢いからわかっていた。でも、目を背けていた。お金を得る術もない私たちはあっという間に、屋敷を追い出され、元の路上生活に戻りました。私は良かったのです。元の鞘に収まっただけですから、今までが夢のような話だっただけだから。
　でも、ローザはそうじゃない。彼女はやがて慣れない生活で体を壊しました。誰かが言いました。「ローザを治すために薬を盗もう」と私たちはお金がありません。だったら盗んで奪うしかないんだって、ヘルムートだって僕たちから奪ったんじゃないかって。仲間たちの多くはそれに同調しました。でも私は「盗むなんて上手くいかない」「盗むことは悪いことだ」と言いました。フランツさんもそう言っていたからです。私を見る仲間たちの目は冷ややかなものでした。「弱虫」。誰かがそう言いました。私は言い返せませんでした。
　計画は実行に移され、そして失敗に終わりました。そして仲間たちの多くが殺されてしまいました。仕方ありません。衛士はそれが仕事なのですから。そして、薬が手に入らず、仲間たちが自分の所為で死んだと、酷薄な世によって失われたと思ったローザはみるみるうちに憔悴しました。以前の穏やかで優しげな笑みは消え失せ、いろんな言葉を教えてくれた口からは世を呪う呪詛が流れ始めていました。私は祈りました。フランツさんから貰った神様の聖印を握りしめ神に届くように。でもそれもかないませんでした。仕方ない―――、そんなことがあるもんか！だって誰も私たちを助けてくれなかった！ローザも仲間たちだって助けてくれなかった！だったら、神様にお願いするしかないじゃないか！私じゃローザを助けることはできない。「英雄になれる」ってフランツさんは言ってくれたけど、みんなが言っていたように何にもできない弱虫じゃないか！
　そんな自暴自棄になっていた時、フランツさんが良く言っていた「彷徨ノ塔」の話を思い出しました。「様々な時代へ行くことができて、望むなら過去を変えることができる」そんな夢物語を。私はローザに咄嗟に言いました。
　「自分が不思議な塔を探し、こんな理不尽な運命を変えてみせる」と、「ローザや死んだ皆を助けてみせる」と、ローザは驚いた顔をし、以前のような微笑みを一瞬した後、目を覚まさなくなりました。
　彼女が死んで、本当に独りになって、泣きに泣きました。そして、そんなある時にそれは語り掛けてきたのです。「私の力を貸してやろう」と傲岸不遜なその神様が。
　「なんで今更！」「もう遅い！」「ローザは死んでしまった！これで私は一人だ！」
　そう、神様に言ってしまいました。そうです。これは八つ当たりです。でも、神様は「すまない」と悲しそうな声で私の罵倒を受けていました。こんな身勝手な私に、それでも神様は―――、"戦勝神"ユリスカロア様は力を貸してくれました。自分が少しの信仰でも必要だからと言っていました。
　私は冒険者になりました。未踏破の迷宮を駆けました。探索済みの迷宮の隅々まで探しました。私と組んだ人たちはそんな私を奇異の目で見ていました。そんなことはどうでも良かった。どんな困難であっても、どんな道であっても私は約束を果たさなければならないのだから。

　あの日、ヘルムートから屋敷を守れなかった自分が嫌いです。
　あの日、仲間の暴走を止められず、死なせてしまった自分が嫌いです。
　今まで、信じてもいなかった話に縋って、現実から目をそらす弱虫な自分が嫌いです。

　私は英雄になりたかったけど、今はもう約束を叶えてみんなを救えればそれで終わってもいい。それが自分の生存理由であり、あの日何もできなかった自分への罰なのだから。
　でも、約束を果たして、それでも、自分が自分の道を歩めるのならば、フランツさんが信じてくれていたように誰かにとっての光や道になれる英雄を目指そうと思います。