小さな農村の出身。
オリヴィアは成人するまで自らの村以外の町などに行ったことはなかった。
無論、村の外について何も知らなかったわけではない。時折村に訪れる旅人から見たことのない街、見たことのない人、見たことのない景色が存在することは聞いていた。しかし、例えば幼馴染の男の子が抱くような外への強いあこがれというものは感じたことがなかった。
生まれ育ったこの村で結婚し家庭を持って子供を産み、いつか老いて死ぬのだと、そう思っていたし、それに不満はなかった。
15歳になると同時に幼馴染と結婚し、小さな家で暮らし、やがて子供を得た。
穏やかな空のある日のこと、村に蛮族の群れが襲いかかってきた。村の護衛団はなすすべもなく壊滅した。村人が無力に殺されていく中、オリヴィアは乳飲み子の我が子を片手に抱えて包丁で蛮族どもに立ち向かった。
蛮族たちは倒れることのない悪鬼のような存在を目にして、やがて恐れをなして逃げ去った。
蛮族が立ち去った時に村で生きているのはオリヴィアと赤子だけだった。
子を抱え道の先にあるらしい街に助けを求めに行くのが、オリヴィアにとって初めての旅となった。
夫と村人たちの弔いを終えた頃、悲しみだけではない激情に駆られるオリヴィアは、慈愛と復讐の女神ミリッツァの声を聞いた。
「復讐は果たされなければならない」
しかして、オリヴィアは復讐者(アベンジャー)たる放浪者(ヴァグランツ)となった。
何年かの月日をかけてオリヴィアは村を襲った蛮族の一味を全滅させた。直接村を襲ってはいなくともあの蛮族たちを支配していたドレイクを殺し、そのドレイクに従っていたすべての勢力を壊滅させた。時に冒険者の、時に国家の軍の、時に他の放浪者(ヴァグランツ)の力を借りもしつつ、オリヴィアは彼女が知る全ての復讐相手を討ち果たした。
復讐を終えたオリヴィアは一つの難題にぶつかることになった。
女手一つで我が子を育てなければいけない。（復讐期間中はミリッツァ神殿に子供を預けていた）
しかし、村がなくなり今の自分は畑も家畜も持っていない。給仕などの雇われ仕事をしたこともない。
オリヴィアは生活のために冒険者になることにした。