同姓の家族が居ない

　ハイヴィ･レッヂ･ミヤォンジョーはアルショニア女王国のごく普通のリカントの家庭に生まれた少年である。両親は仲睦まじく姉と妹に挟まれた彼は、典型的な普通のアルショニア少年として育つことになる。物心がつく頃に猟師の父親が急死した。毒キノコに当たったらしい。死んだ父親の変わりに家事全般と母親の仕事の手伝い、姉妹のお世話など…実に多忙な生活を送ることになった。幸か不幸か、アルショニア女王国は女権国家であるため彼はその処遇に何の疑問を抱かず、周囲も模範的なアルショニア少年だといった具合であった(父親の急死には同情されて甘やかして貰ってたのはナイショ)。

冒険に誘われたことがある

　そんなハイヴィ･レッヂ･ミヤォンジョー少年は母親の切り盛りする宿で一風変わった団体の相手をする。「冒険者」と、呼ばれる彼らの話は少年心をくすぐるのに十分な威力があった。橋の向こうでは男の人が前に立つ、火を吹くドラゴンは本当に居る、蛮族や魔神から人々を守るヒーローが居る……。彼はその冒険者の話を熱心に熱心に聞いていた。ある日彼らから冒険に誘われることとなる。親姉妹に許可を貰って簡単な依頼に同行した彼は、その帰りに「誰だって幸せになる権利がある」という冒険者の言葉に胸を打たれる。いつか、「誰の幸せも守れる冒険者」になりたいな。そう漠然とおもったのであった。

未だ叶わぬ夢がある

　「誰もが幸福を追い求める事ができる世の中にする」ハイヴィ･レッヂ･ミヤォンジョーは何時もこの夢を叶えるために、その刃を振るう。彼をそうさせたのは子供の頃の強烈な冒険体験に他ならない。彼は冒険者に同行した際、言葉の分からない蛮族に襲われそうになった。最終的に冒険者によって駆逐された蛮族たちは静かに暮らしているだけの、比較的無害な者だった。死に際の言葉はもう覚えていないが、やりようによっては避けられたかもしれない悲劇に彼は酷く心を痛めたのだ。「誰だって幸せになれる。」慰めの言葉は暫しの時を経て夢へと変化していった。
　だが、全ての幸せを肯定するほど彼も甘くはない。他者の幸せを阻害してまで幸せを得ようとする輩には容赦なくその刃を振り下ろす。彼は彼自信が誰かの幸せを奪っていることを知っている。だからこそ、死ぬまで、死してなお、その身を苦難の中に投じ続ける。トパーズ･レモンはハイヴィ･レッヂ･ミヤォンジョーでさえも罰するのだ。

故郷に居られなくなって冒険者に　

　ハイヴィ･レッヂ･ミヤォンジョーは故郷に帰ることはない。無言で家を飛び出した彼の後ろめたさはその原因の一端である。が、最たる訳はソレではない。彼はアルショニアを出る3日前まで「紅の牙女騎士団」の若き一員として訓練を受けていたのだ。そう、女装してこっそりと訓練を受けていたのだ。約2年もの間、若手騎士の隊長候補として研鑽を積んでいた。ある日、実践稽古で赤毛のリカントと戦った。辛勝した彼の元に赤毛のリカントは「またやろうね、女装君」と、耳打ちをして去っていった。彼は酷く動揺した。他の人にもバレていたのであろうか、家族はなんと言うだろうか、同期の人はなんと言うか───
　頭がパンクしそうなほどの不安に耐えきれなくなった彼はついにアルショニアを飛び出した。「もう帰ってこない」書き置きを残したまま、獣の唸り声と共にアルショニア女王国から逃げて逃げて……今に至る。
　トパーズ･レモンそれは、彼の偽名であり、冒険の途中で見た魔動機文明の本の3号ライダーの名前である。彼が解決した問題には必ずレモンが添えられる事にあやかりかれも、トパーズで出来たレモンのアクセサリーを現場に残して立ち去るようにしている。

ハイヴィ･レッヂ･ミヤォンジョー、お前はとても優しい子。
お前に人の顔など解りはしない。だが、お前は優しい子。
お前は一時の同情から、エルフの女に嘘をついた。
お前は賢い子だ。お前はお前自身の自己満足のためにエルフの女に守ることができない約束をした。
私はお前の本性を知っている。私がその手助けをしてやろう。
私を手に取れ。近付くものを全て切り伏せ、獣のような雄叫びを上げろ。お前は獣だ。お前に言葉は必要ない。衝動のままに破壊するといい。何時か願っただろう？獣になりたいと。お前が人の顔を解せぬのは、お前が獣になりたいと願ったからだ。

この魔域は複数のコアから生成されたらしい。我々はそれらを破壊する任務を受けた。構成は魔法使い2名、銃使い、前衛2名である。言動から両極端な性格のものを集められたらしい。
魔域の中では一時、連れ去られてしまったものの魔域の破壊を志す者達の協力で事なきを得た。異形の頭をした人々、記憶を奪う霧……不思議なものが多い。
魔域の守り手は「王」とよばれ、各々が各々のコアを守っているらしい。魔域の王の一人に接触、向こうが提示する「試練」を解決したのち、コアを破壊した。「記憶がしっかりしている人に気を付けろ」彼女？が、我々に残した発言だが気になるところは幾つかある。
何故、魔域の中にいる協力者たちは我々と相対したとき「味方」としたのか。なぜ、王の一人が同じ屋根の下に存在するのか…。
仮説としては、コアのひとつは案外近い所にある事が挙げられるが……。報告は以上、引き続き依頼に専念する。