前は貴族として不自由なく暮らしていた。
気まぐれに操霊術を学んでいた以外は貴族としては平凡なものだったと思う。
よくつるんでいた者がいた。そいつは優秀なやつだったよ。
親父の知り合いってことで、両親が死んだとかで子供の頃に引き取られてきて以来、一緒に暮らしてきた。
たまにこっそりと街に出てはバレないように、二人で悪戯や悪さをしていた。
馬鹿なことをしつつも、いずれは親の後を継いで貴族としてやっていくのだと思ってたんだ。
あの時がくるまでは・・・。
とある日の夜、バカみたいにデカい声で目が覚めた。悲鳴だった。
廊下にでると、従者達の死体が転がっていて、屋敷が燃え上がっているのがわかった。
いくつか部屋をみて回って、親父の部屋に入った時、
奴が、ガキの頃から一緒につるんできたアイツが、親父を刺し殺していた。
奴は俺も殺そうとしてきやがった。武器もない、このままじゃ、殺される、だから、逃げた。
燃え落ちていく屋敷の中を必死こいてだ。
屋敷を飛び出して逃げ切って、夜が明けてから戻ってみると、もはやほとんどが燃え尽きていた。
俺はなんとか売れるものをかき集めて、売って、旅の支度を整えた。そこそこの額で売れるものが残っていたのは幸運だ。
アイツの姿はどこにもなかった。きっとどこかに行ったはずだ。復讐してやらなきゃ気が済まない。
そんなこんなでしばらく旅をしてきたわけだが、やはり金がかかる。金がなきゃ何も始まらなければ何もできない。
ちょうど入った宿で、人手を探していたらしく、そのまま冒険者になった。
うまくいけば相当な大金を手に出来るかもしれない。
それに、奴に似た人物をこの辺りで見かけたという情報もあった。
まずは依頼でもこなしながら探すとしようか。