マグノアの有力者「ネツァクァ家」に仕える両親の元に生まれた。
幼い頃から同じ境遇の子供達と共に育った。
そしてその中に「メイ・ネツァクァ」というネツァクァ家のナイトメアの一人娘もいた。
それでも皆分け隔てなく接し、仲のいい友達として育った。

13歳になり、次第にみんな進路を定めていった。
心の底では寂しさがあったのか、両親と同じようにネツァクァ家に仕える道を選んだ。
自分の担当は庭の管理・家畜の管理だった。
メイは自分の作る庭が好きだったのか、度々訪れては雑談なんかをしていた。

雪の降る2月、小さな蕾が実る14歳の誕生日のこと。夕方帰宅少し前にメイが訪れ、プレゼントを渡してきた。
とても綺麗なマフラーだった。
それ以来そのマフラーを大切に身につけている。

15歳になって少しした春、周囲でとある噂を耳にした。
「メイは横領をしている、じきに警邏隊にしょっ引かれる」と。
長年付き合ってきた中で当然知っている、そんなわけがないと。

その後、ふと庭を見た時、警邏体と思われる人物がうろついているのを見て悪寒が走り、こう口にした。
「横領は私の指示によるものです」

その後は所持品を没収されずっと獄中で暮らしていた。横領した金銭のありかも弁解も、何も言わずにただただ沈黙を貫いた。
獄中で酷い扱いを受けても、首に跡が残るような怪我をしても、何をされたとしても沈黙を貫き、祈っていた。

16歳の誕生日を迎え、その日も獄中で祈っていた。その日は何か空気が違い、何かの声を聞いた。
言葉の内容までは聞き取れなかった。だが何かを掴み取るための指先をもらったような気がした。
それ以降はその声を信じてまっすぐ進むことを選ぶことにした。

それからいくらか時が経った。実際に横領を行っていたのは別の人物であると判明し、逮捕された。
真犯人が判明したことで晴れて自分は潔白の身となった。

だが収監中に家族から縁も切られ、職場からもクビを切られてしまった。
ここからの再スタートだと感じ、キングスレイで冒険者として再スタートすることにした。
キングスレイでは冒険者が警邏体の代理などもするという。
そこならば人のため、平和のための冒険ができるのではないかと思った。

身支度を整えて向かう準備をしているある日、手紙と荷物が届いた。
差出人は不明、「いつでも待っています」その一言と共にリボンが同封されていた。
魂が穢れていても、心が清らかで美しいのだな、と感じながらもキングスレイ行きの列車に乗った。

投獄前まで身につけていたメイからの誕生日プレゼント。
出所後に返却してもらったが、現在は傷跡を隠してくれるということもあり、
基本的にずっと身につけ続けている。

誰かから送られてきたリボン。
10歳より前、幼い頃に見たような気がするデザイン。
どこか懐かしさを感じ、身につけている。

獄中で跡の残る怪我をしてしまったこともあり、うまく隠せているかを確認するために持っている。
誰かに心配させてしまっては困るので。

獣変貌をしている時、誰とも話せないのが悲しいので筆談で話をするために持ち歩いている。
幼少期に友達から「筆談でもいいんじゃない？」と言われたのが思い出。