彼女の人生には今まで主人と呼べる者が3人いた
1人目は少し高貴な身分の学者。遺跡探索の際にレイを発見し、レイ自身の希望によってこの学者に仕える。
学者は品行方正な紳士であり、彼女もすぐに懐いた。
まさに理想の主であり、この男に仕えることができる自分は幸福であり、身命を賭して仕えたいと願った。
だがその願いは自らの失敗によって砕かれる。
ある日の暮方に翌朝の朝食のための下準備をしていた彼女は火の始末を怠ったままその場を後にした。
夜遅くに苦しさに目を覚ますと火の手が与えられていた居室の中にまで迫っていることが分かった。
どうしようもできずに徐々に迫る火の手に身体を焼かれ煙によって薄れる意識の中、
死を悟った彼女の目の前に水を被った主が現れ、彼女を救い出した。
そして主は「まだ残っている者がいるはずだ」と火の海に戻っていき、そのまま帰らぬ人となった。
焼け跡から見つかった、彼がいつも身に着けていた装飾品とその場に落ちていた骨だけが遺品となり、彼女はそれを持ち出した。

2人目は路頭を迷っていた際に出会った男だった。
男は良くない薬を売っている売人で、会ったときから彼女を下卑た目で見ていた。
そういう目的で拾われたことは理解していたが、彼女は心労と諦観の果てに売人の手を取った。
売人のもとでは薬と堕落に侵される毎日だった。
必要とされ求められることに悦楽は覚えたものの、売人からはかつての主のような主としての従者に対する思いのようなものが感じられなかった。故に彼女は試すことにした。2人の住んでいた家に火を放ち、自室で主の助けを待った。だが助けは現れなかった。絶望の中、死を待った。次に目を覚ました時に、そこは病室だった。

3人目は自分を看病した薬師の男だった。
彼は多くの患者を抱える薬師であり、彼女は彼の仕事を手伝う従者としての立場を望んだ。
彼は彼女に友人のような態度で接した。
だが、誰にでも優しい彼に独占欲を感じた。誰にでも優しい彼の一番の特別になりたかった。
故にまた火を放った。彼女にとって方法はこれしかありえなかった。
結果、彼は助けに来てくれた。とても、とても満たされた気持ちになった。
彼は彼女を助け出した後に中毒症状で亡くなった。罪悪感もあったが、多幸感が勝った。
彼女は泣きながら彼を抱きしめ、彼の最期を看取ることができたのだから。

そして4人目の主に辿り着く。




他人に仕える身として家事から戦闘まで、一通りのことができる。特に料理は得意分野。
全身の火傷跡を隠すために夏でも肌は顔以外露出させない。
ぼんやりしているように見られがちだが意志は強い。