容姿・経歴・その他メモ

・守りの剣を手に持ったことがある
・濡れ衣を着せられたことがある
・大切な約束をしている
☆友達に勧められて

今から一年前のこと。とある街の平和が、蛮族の大侵攻により脅かされた。その原因は、〈守りの剣〉の力が弱まってしまったためだ。
多数の死傷者を出したその戦禍の中に、『彼女』の姿はあった。平民の出でありながらも高い剣の実力から神聖騎士団の一員として活動していた彼女は、大侵攻の際に街の要たる〈守りの剣〉を守護する部隊に配属されていた。
前線が突破され、蛮族たちは街の内部にまで侵攻していく。兵たちが殺戮されていく中で、彼女はたった一人、父から託された剣を手にし、蛮族を斬り伏せていく。
死臭の中でただひたすら剣を振り続ける彼女だったが、ある蛮族の攻撃を防いだ際に、剣が真っ二つに折れてしまう。絶体絶命の状況に陥る彼女だったが、まだ使える武器は残っていた。
「あの子のためなら……魔剣よ、力を貸せッ……！」
彼女は本来の守護対象であるはずの〈守りの剣〉を手にし、返り血に塗れながら、殺しの限りを尽くした。ただ一つの、『守るべきもの』のために。

彼女の活躍により蛮族たちは撤退し、被害は甚大だったものの街そのものが崩壊することは無かった。そして彼女の勇姿を目撃した平民たちは、蛮族から街を救った『魔剣の聖騎士』として称賛した。

「ありがとう、私たちの街を守ってくれて」
「……うん」

彼女も、守りたかった存在を守ることができた。再び、平和な日々を送ることができるはずだった。

　だが、彼女の活躍が気に食わない者たちがいた。平民の、しかも女が街を救ったとなると、上流階級の者たちの面子が立たなくなってしまうためだ。
　そして大侵攻のしばらくした後、彼女が振るっていた魔剣が忽然と姿を消した。貴族たちはそれを好機とし、街を救ったはずの英雄を罪人に仕立て上げたのだ。
　このまま捕まれば、反逆者として死罪は免れない。彼女は絶望した。蛮族なぞよりも薄汚い人間の心というものに。けれど、そんな彼女に友は語りかけるのだ。

「覚えてる？　パパとママが死んで、病気で満足に動くこともできなくて、人生に絶望してた小さい頃の私に、あなたが言ってくれた言葉」
「……私が一生、君を守るナイトでいてあげる……」

彼女には守らなければならないものがある。それは、たったひとりの親友。魔剣よりも、街よりも、世界よりも大切な存在。だから、決して捕まるわけにはいかなかった。
　彼女は追っ手の目を掻い潜り、生まれてから一度も出ることのなかった街から逃げ出した。美しく長かった髪を切り落とし、父から受け継いだ真紅の右眼を前髪で隠して。

「約束……いつか必ず、帰ってくること」

　新たにできた、二人の間のもう一つの約束を胸に、彼女は夜道を駆けていくのだった――。

　――数日後、冒険者ギルドに一人の新人冒険者がやって来た。
　女性にも男性にも見える、中性的な容姿と体型。片袖の破れたローブから見える白い腕にはそれなりに筋肉がついているようだが、背中に背負うはそれに似合わぬ両手杖。
　ギルド内で仲間と酒を酌み交わしていた柄の悪い大男は、その冒険者を新人と見るや否や、酒臭い息を撒き散らしながら絡んでくる。

「お前、ここじゃ見ねぇ顔だなぁ。なんて名前だ？」
「名前……？　そうだな、名前は……」

　さっとギルド内を見回すと、〈守りの剣〉を盗んだ大罪人としてとある少女の人相書きが貼られていた。もう、かつて使っていた名前は使えない。父から託された剣は失い、剣術も封印するしかない。
　それでも、やらなければならないことがある。冒険者として旅をし、必ず失われた魔剣を見つけ出してみせる。そして冤罪を晴らして帰るんだ、親友の元に。

「……私の名前は……」

　とっさに口をついて出てきた名前、それは彼女の親友の名であった。こうすれば、大好きな友がいつでも見守ってくれているような、そんな気がしたから。
こうして、失われた魔剣を求める彼女の冒険は、幕を上げるのだった――。

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