容姿・経歴・その他メモ

――世界は色褪せていた。
生まれ故郷の事象ことごとく、自身が口を挟めば万事思い通りに運びて。
今は知る、この世界で得難き平穏は、知らぬ身には刺激に乏しく。
皆は「神童」と持て囃せしが、その身にとりては少々思慮を巡らさば自明のことゆえ、讃えられようと感慨など湧くはずもなく。
誰かと語り合いたくとも、多少固い結び目に触れた時点で思考を止める相手では話にならず。
少なくとも、その地で誰よりも聡かったその子供にとりて、見える世界はひどくつまらないものと見えていて。

そんな子供のささやかな楽しみは、時折訪れる旅人が語る外の世界の話のみ。特段”吟遊詩人”を名乗る、彼ら彼女らが紡ぐ物語、そこには子供の浅い経験ごときでは、予想もできない驚きに満ちていた。
唯一世界が色づく貴重な時間は、それでも語られるをいくつも聞き覚えれば、聡い子供には『物語の鋳型』が見えてしまい。
やがては知らぬ話の驚きも薄くなり、褪せた世界に引き戻される感覚に諦念を覚えた頃。

――長く続いた平穏は破られた。

襲い来る魔物を前に、過ぎ去りし安寧の代償は重く。生まれ故郷が抗う術は、居合わせた旅人達を含めて僅かばかり。
摂理に従うのならば、ただただ蹂躙されるはずだった。しかし、我が身があるはこの時のためと、聡き子供は声を張り上げる。
若者にも届かぬ者の采配は、されど積み重ねし信頼を以て故郷の全てに行き届く。誰もが傷を負いながら、それでも追いすがる魔物の爪から逃れおおせ、賢しき思惑の通りに、犠牲となるは”指揮を執るため最後まで残り続けた子供”のみ。
『最小限の犠牲で最大限を救えた』ただその事実に満足すら覚えながら、命を喰らう牙すら受け入れ――
否と阻むは盾と鎧、終わるはお前と閃く剣戟、抗う力はここにありと、迸る魔力が焔を咲かす。
『なぜ戻った！』と、父母の同胞の護りがため、先を行かせたはずの旅人達へと子供は怒る。
『ふざけるな！』と、子供を犠牲に無傷で生き延びるは恥以外の何物でもないと、旅人達は倍で足らぬ憤怒を返す。
狂う計算、足りぬ戦力。されど誰もが『生きて帰す』と意地を張り、使える物は全て使うと共に戦い、逃げて隠れて抗い足掻き――

――やがて届くは勇ましき鬨の声。子供の予想に遥かに早く、軍靴ははびこる脅威を駆逐せん。遂には皆が満身創痍なれど、確かな明日の生を掴み取る。
そして子供は知るに至る。合理を詰めた予測の先、それでもと覆す”何か”があるからこそ、物語は語り継がれるのだと。

そして子供は決意した。誰もが口にする冒険譚、その始まりをこの目で見ると。
期待を蹴飛ばし、願うを説き伏せ、縋るを遂に振り切って、”紡ぎの魔術師”は世界を流離う。
求むるはまだ見ぬ物語、願うは紡がれる傍らに。
いつか始まりの語り部となるを夢見て、広き世界を気の向くままに――

「――求められしに語る原点、されど思い返すに火が出る顔。再び語るは何卒ご容赦をば。
さあさあ、つまらぬ私の過去など捨て置きまして、明日の冒険に想いを馳せましょう！」

《経歴》
・まだ恋をしたことがない
・命を救われたことがある
・家族から探されている
《冒険の理由》
・身分を隠すため

エルフの里の長の長子。金髪金眼で中世的な容姿と声質。体型を隠すゆったりとした旅装。
周囲の反対を押し切って里を出た。未練がましい親類や知人が、未だに連れ戻そうと探している。
生来の聡明さから「神童」などと持て囃されたが、それも停滞する里の中であったからこそで、外の世界を知るにつれ、今は上には上がいると理解している。
常は陽気で軟派に見えるが、『その方が受け入れられやすい』という理由から演じており、本質的には合理主義。

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