【背景設定①】
　大破局時代後期にレーゼルドーン大陸からアルフレイム大陸に渡って来たキルキエ家は、優秀な傭兵や密偵としての素質を有するシャドウ族の者として、実力主義を国是とするラージャハ帝国に迎え入れられる形で居を構えました。そしてキルキエ家が軍人一家としてそれなりに名を馳せてきた時に、シトラはナイトメアとして生を受けました。
　しかしシトラは生まれ持って穢れを有するナイトメアとして生誕し、それはシトラがシャドウが本来持ち合わせている暗視や優れた耐魔法性を有してないことを意味しました。故にキルキエ家はシトラの処遇について大きく頭を悩ませました。最終的に、ラージャハ帝国特有の実力主義に基づくナイトメア迎合の国風と、適切な治療を受けられたことによるシトラの母親の生存から、シトラをシャドウとしてキルキエ家に迎え入れ、そして育て上げることにしました。
　捨てられることなく育ったシトラは、ナイトメア特有の強靭な肉体を活かしながら傭兵や密偵として長い歴史を有するシャドウ族の非常に実戦的な近接格闘術のノウハウを修めていき、10歳となる頃には戦闘面に於いて非常に優れたパフォーマンスを発揮するようになりました。そしてそれに伴って、キルキエ邸周辺に住む子供達に畏怖される存在となりました。しかしそれはシトラにとって良い友人と競合相手がいないことを意味し、その毎日は幼いシトラにとって退屈以外の何でもありませんでした。そしてそんな退屈な日々が過ぎること5年が過ぎ、キルキエ家の契約としてシトラが帝国軍人となった後もそれが変容することはありませんでした。

【背景設定②】
　そんなある日の晩、いつものようにシトラが街の警邏をしていると、路地裏で二人の暴漢が若い男性に金品を強請っている場面に遭遇しそれを普通に解決しました。しかしその時、一人の人間の麗人がシトラに突然襲い掛かり格闘戦となりました。正義の冒険者を名乗るその麗人はシトラを暴漢と見なしており、その誤解が解けた時にはシトラを下していました。麗人はウーティスと名乗り、誤解によってシトラを傷付けてしまったことを何度も謝罪しました。しかしシトラは襲われて怪我を負ったことよりも、初めて自身が身体勝負によって誰かに負かされたことに衝撃を受け、それと同時に素晴らしき競合相手且つ目標となる人物が近くにいたことにひどく感動しました。
　ウーティスによる治療を受けた後も、シトラは度々ウーティスの属するギルドを訪ねては格闘戦を持ち掛け、互いに一進一退の攻防を繰り広げました。ウーティス自身も正義の為には強くならなくてはならないの信念のもと、依頼がない日は快くシトラのお願いを受け入れていました。そんな関係を続けている内に、シトラはウーティスへのライバル意識とは別に恋心を兆させ、戦闘訓練とはまた別にウーティスへアプローチをかけるようになりました。そしてそれはウーティスにも伝わり、数年後には結婚するまでに至りました。そして結婚生活はシトラにとって充足の日々であり、それが永劫に続くことを願っていました。
　しかしシトラはナイトメア特有のその不老性から、次々と年数を重ねていくごとにキルキエの家族を最初に亡くしていき、やがて妻であるウーティスすらも老いによって亡くしてしまいました。シトラはその孤独感と年月によって家族が失われていくという辛い現実から、精神をひどく病ませてしまいました。しかし、晩年に交わした「また私を見つけに来てね。そしたら...また私と勝負をしましょう」と妻ウーティスからの約束を月神シーンの礼拝時に思い出し、それを守る為にシトラは帝国軍を退役した後、ウーティスと邂逅を果たした際に恥とならないように単純に強さを求めながら、アルフレイム全土を自由に巡ることの出来る冒険者にへと転身することを決めました。