履歴
許嫁がいる(アルバス君)
666人の兄弟姉妹がいる
父親が旅に出ている
故郷が滅ぼされたので
教導の国ドラグマで生まれ、旅をすることになった少女。額に聖印を持つ
教導の国ドラグマでは身寄りのない子供を集め、有用な人材に育成するための教育を施す機関が存在した。その名を「セントラル・ドラグマ」多種多様な種族を集め、様々な能力開発を行う一方。機関の責任者マクシムスによって、子供たちに聖痕が付与される。それは一種の道徳装置であり、「セントラル・ドラグマ」に永遠の忠誠を誓わせるものでもあった。
エルテシアは、「セントラル・ドラグマ」において、初めての額に聖痕を与えられた聖女であり、与えられる役目もとても重要なものになった。彼女自身もまた、ドラグマのために命をささげることに対して疑念を抱くことなく、日々を精進していた。
エルテシアは、心優しい存在だった。貧しいものにも手を差し伸べ、困っている人がいれば助ける。誰かの笑顔を見ることは、そのままエルテシアにとっての幸せだった。
エルテシアには、特に親しくしている姉が一人いる。両手両足に聖痕を施されたバジリスクの少女「アヤメ・ドリス」ともに特別な役目を与えられたものとして、生活や修行を共に行っていた。
アヤメはドラグマから重要な任務が与えられ、外国へ旅立つことになったため、しばしの別れとなっている。
ある時、エルテシアは知見を広めるため外遊の旅に出ることになった。14歳、成人直前のことであった。旅に出るにあたって、護衛の者を国外から雇うことになる。シャドウの少年「アルバス」彼との邂逅……それはエルテシアの運命を大きく変えることになる。
旅に出て、エルテシアが得たものは三つ。
世界には様々な生活様式、人々の暮らしがあること
未開拓の地域、遺跡、この世界には未知なるワクワクがたくさんあること
そして、アルバスのこと
彼は無口で、基本何を考えているのかはわからない。でも、エルテシアに危害が及ばないように気を使ってくれている。彼の行動にはそういう気づかいが感じられた。それからはよく彼のことを目で追って、彼のことを考えるようになった。
とある国に滞在したとき、エルテシアは魔神に襲われた。アルバスがそばにおらず、命の危機にさらされることになった。敵の攻撃を防具で防ぎ、攻撃魔法で敵を吹っ飛ばし、傷をいやしながら、起死回生の機会を待つ……しかし、年端もいかないただの少女。魔神の猛攻を防ぐことで精いっぱい。徐々に追い詰められ、もう終わりだと思ったその時……月夜に照らされる黒い影、短い剣戟の音、緊張の糸が切れたエルテシアの意識は薄れていった。
次に目覚めたとき、エルテシアの目には星空が映っていた。パチパチと炎に焼かれた枝が音を立てる。焚火の音だと思って、目をそちらに向けると、いつもぶっきらぼうな彼の顔。焚火に照らされて、浅黒い色の顔が赤く染まっている。彼が私に気づいてそばに寄ってくる。___大事な時にそばに入れなくて済まない。お前を傷つけてしまって済まない___申し訳なさそうにしている彼の頬に、そっと手を添える。__ありがとう、あなたのおかげで私はまだ生きています__感謝の言葉を伝えると、彼は一度驚いたような顔をしてから、一筋涙をこぼした。その表情があまりに綺麗で、エルテシアはその光景を記憶に焼き付けようと思った。
それから数日、町で療養し元気になったエルテシアは、改めてアルバスに感謝を伝えようと考えていた。しかし何か言おうとするたび彼はどこかに行こうとするし、黙っているだけでも、彼はなんだか気まずそうにしているし……この際だから、何か物でも送ろうかと考えていたエルテシアは、とある古物商で売られていた、まじない物のリングが目に映った。子供っぽいともとれる、安っぽいペアリング。これは天啓だと考えたエルテシアは早速アルバスを呼び出し……彼の手を取りながら、その手にリングを握らせて、彼に伝えた___あなたと一緒に旅ができてよかった。これは、その感謝のしるしです。___
指輪を受け取った彼の表情は、どうしたらいいのかわからないといった感じで……そんなところもまた、微笑ましいと思えた。
どこか遠くの国では同じ指輪を贈ること、それすなわち永遠を誓うこと。昔読んだ本にそう書いてあった。顔が赤くなってなかっただろうか……そんなことを、エルテシアは考えていた。
旅が終わりに近づき、ドラグマに帰ることになった。アルバスとの別れは惜しかったが、ドラグマでの自分の立場を考えると、これ以上の旅の時間は、故郷の仲間たちに迷惑がかかる。「いつか必ずまた、会いましょう。またおいしいものを一緒に食べましょう」アルバスに別れを告げ、エルテシアは一路ドラグマに戻った。
そこにあったのは……惨劇、炎、破壊、死。ドラグマが、燃えていた___
何があったのか、エルテシアには想像もできなかった。燃え盛る街を駆け回って、生きている人がいないか探した。ようやく一人、もう息がなかった。兄弟の一人だった。また一人、すでにこと切れていた。涙がとめどなく流れ、罪火によってすぐに乾く……ようやく意識のある人がいた。傷は深かったが、命に別状はなかった。無事な建物で、傷の手当てをしながら事情を聴いた。___ドラグマが燃えたのは、マクシムスの仕業だ___与えられた情報は、エルテシアをひどく混乱させた。父親代わりともいえるマクシムスが、まさか故郷のドラグマを破壊するなんて……父の真意を知りたい。そう思ったエルテシアは、再び旅に出ることを決意した。
二度目の旅に出てから、エルテシアはアルバスと再会できないかと考えていた。彼の力はとても頼りになるし……それに……
マクシムスの動向がわからない以上、旅を続けるための力をつけることと、仲間を集めることが大事だと感じたエルテシアは、砂漠の町ゴルゴンダにて冒険者の仲間を探そうとした。そこであったのが、唯一生き残った姉妹、アヤメ・ドリスだった。そこからは、竜王のパーティーに入り、様々な冒険をすることになる。