「どうやら近隣に蛮族が住み着いているようだ」
　初期知力7と頭の軽い彼女の住まう村では、話し合いが行われていた。論議の末、ギルドへ討伐及び救助依頼を出そうという結論に至った。初期俊敏度10と大分足が遅いものの、身体だけは頑強な彼女がギルドへ向かうこととなった。当然のように、依頼に関する手紙と一緒に(初期知力7)。
　ある日初期知力7と大分頭の軽い彼女は、阿呆なことに魔剣の迷宮に迷い込んでしまう。初期知力7なので仕方ないね。脱出は叶わず、手持ちの食糧は心許ない。初期知力7と大分頭の軽い彼女は、目の前が真っ暗になった。



　気が付いた時、目の前には見知らぬ冒険者風の一団が居た。討伐依頼を請け負ったのだという彼等が、私を発見し、救助してくれたのだ。これで助かったと安堵したのも束の間、村に帰った私を待ち受けていたのは辛い現実であった。
　意識を手放している間に、村は蛮族の襲撃によって壊滅的被害を受けていたのだった。
　「生き残りは君一人だ。討伐はしたが、村の救助は叶わなかった」

　ギルドへの報告及び保護の名目で、彼らに同行する形となった。状況を説明した後に渡されたのは、見覚えのある村の皆で出し合った金ガメルであった。

　荒廃した村に戻り、途方に暮れる。何もする気力が起きず、ただただ時が経過する。あの日の飢餓感が押し寄せ、「いっそこのまま意識を手放してしまえば」という考えが浮かぶ……。



　だがッ！その時、初期生命力19と初期精神力19が、初期知力7を遥かに上回る生命と精神が語り掛けてきたッ！
　『『どうせ死ぬなら蛮族ぶん殴ってから死のうッ！！』』
　初期知力7では、狂気じみた初期生命力19と初期精神力19に勝てるわけがない……。
　こうしてはいられない。私が生き残ったのは、この肉体があるのは、蛮族を殴るためッ！
　生き残り症候群(サバイバーズ・ギルト)に突き動かされる拳闘士(グラップラー)の旅が今ッ！始まるッ！