その家族というものは、血の繋がりがあるとはいえ、一般的とはかけ離れた歪んだ関係だった。
親は子供を傷付け、罵倒し、理想を押し付けた。
ニクスは最初、それが当たり前と思い、受け入れていたが……。

いつも通り、人族の村へ買い物に行けと言われたある日、全く異なる家族の在り方を見てしまう。
それは素直なニクスの価値観変えるには十分な光景であった。
家族は互いを想い合い、助け合うもの。

その出来事をニクスは義理の父親にその話を喜んで話し、姉妹との接し方を変えるよう、説得を試みた。
結果は――わかり切っていた。
ニクスは、自分が家族ではなく、ただの奴隷であること。
人ではなく、道具として生かされているということ。
今まで訪れた村は全て滅ぼされてしまったこと。

痛む身体を抱きかかえながら、
何故あの家族のように、暖かく、優しい時間を過ごせないのか。
自分のせいであの村が滅びてしまったのか。
そんな疫病神の自分がここにいる意味はあるのだろうか。悩み続けた。

とうとう、意味を見つけることもできずボロボロのナイフで首を切り、自殺を図る。
幸か不幸か生命力豊かなメリアに生まれたニクスは死ぬことはできなかった。
霞がかった意識の中で、ふと、同じ境遇のグラフェア(ひかるPC)のことが思い浮かんだ。
彼……彼女とはいつだって対等に互いのことを喜び、悲しみ、怒ってきた。
それこそ自分が憧れた家族というものではないか。

そう気付いたニクスは、彼女のことをこの身に代えても守る、そう決意した。