白い肌に黒い長髪と透き通るような青色の目をした少女型のルーンフォーク。長い髪は毛先が地面に付いてしまう程であり、纏めずに引きずりながら走る姿がよく見られる。しかし幼女体型という訳では無く、ルーンフォークの平均より大幅に低いものの背丈は少女体型に収まる範囲。にも拘わらず自身の背丈より大きな『箱』を軽々と背負う姿に、初見では目を疑う者も少なくない。

ルーンフォークの中でもかなり頑強に作られているのか、上背は低くとも膂力は強靭で、大の大人が数人がかりでも持ち上げられないようなものでも軽々持ち上げてしまう。背負った大きな『箱』もその象徴で、彼女以外ではとても持ち歩ける代物では無い。本人が言うには『封印されし聖剣』であり、銃なのだそう。

機体の強さの反面、精神性はまだまだ未熟そのもの。純粋で素直、疑う事を知らない。基本的に口数が少なく、寡黙とされる者が多いというのがルーンフォークに対する一般的な印象だが、彼女の天真爛漫な性格はその印象と真逆と言って良い。製造年月日や稼働時間は不明だが、外見も相俟って彼女と関わる多くの者が彼女を成人未満の子供だと思っている。好奇心が人一倍強く、目を離すとすぐに見知らぬ物へ手を伸ばしている事が多いのも一因だろう。

とある冒険者パーティが依頼を受けて踏破した遺跡、その最下層にて発見されたルーンフォーク。ハーヴェス近郊にあるその遺跡は過去踏破済であり、そのパーティが派遣されたのは遺跡最深部だと思われていた空間が地震によって崩れ、更に奥へ続く道が現れたからだった。新たに発見された道の最奥にあった空間には彼女を保管するためのポッド以外に何も無く、彼女の維持や他のルーンフォークを生み出すために必要なはずのジェネレータが存在しなかった事から、ポッドの内蔵魔力を使用した遺跡深部での長期保存によって『大破局』から逃れた魔動機文明時代の生き残りであると推測されている。

起動時、彼女には保管前の記録が存在していなかった。製造年月、初回起動日、稼働時間などの一切が保管機に記録されておらず、彼女自身もそれらを記憶していなかった。故に『製造後一年以内に死を迎えた』か、或いは『製造されてから一度も起動されていなかった』かのどちらかであると結論付けられ、身寄りなどあるはずも無い彼女はギルドに引き取られる事となる。

保管機に記されていた識別名である『アリス』と、ケルディオン大陸から流れ着いたというパーティメンバーの一人から『天童』の家名を貰い受け、現在は天童アリスと名乗り生活している。保護されてからはハーヴェスの冒険者ギルドに併設された酒場で看板娘をしており、三年が経った今でも集客力は上々。天真爛漫な性格は、荒くれ揃いの冒険者達にもウケが良く、皆に可愛がられながらすくすくと（精神的に）育った。

多くの冒険者に可愛がられ、彼ら彼女らの冒険譚や、過去の冒険者達が残した英雄譚を聞いている内に、アリスは冒険者になりたいと焦がれるようになった。中でもアリスの人格形成に影響を及ぼしたのは、吟遊詩人達が幾つも幾度も聞かせた「勇者」の旅路の物語であり、必然的にアリスは勇者を目指すようになる。自身と共に保管されていた『箱』を『聖剣』と呼び、自身を『勇者』と名乗る姿は、傍から見れば微笑ましいものだ。

冒険者となる事を決めたアリスだったが、今まで世話になった『ドラゴンファイア』で登録するつもりは無いらしく、せっせと旅立ちの準備をするアリスの姿に酒場を利用していた多くの冒険者が涙を飲んだ。それはギルドマスターも同様で、愛娘同然の看板娘を必死に引き留めようとしていたが、他でも無いアリス本人から「ここで冒険者になったらアリスは箱入り娘？のままになってしまいます！」と言われ、ようやく旅立ちを認めた。旅立ちと言ってもハーヴェス内の別ギルドで登録を行うというだけなのだが。

広く普及しているものと同一の体系をした、アリスの主兵装となる魔法。弾丸に魔力を込め、銃によってそれを放つ事で様々な効果を齎す。まだまだ習いたてであるため扱える魔法も少なく、熟練度も低いと言わざるを得ないが。

魔動機術を十全に活かすために必要とされる射撃技能。駆け出し冒険者、つまりは自分の後輩となるアリスに、冒険者達は『動き続ける敵に命中させ、動き続ける味方を避ける撃ち方』を学ばせた。

冒険者に必要な知識面全般を扱う技能。アリスはこの技能の習熟、知識の吸収が得意であり、書物を読み漁ってはそれら情報の山を自身に記録している。

アリスが背負う大きな箱。特殊な意匠を隠すために全体をなめし革で覆った状態を『箱』と称しているだけで、正確に言えば長方形の魔動機であり、解析によればその本質は魔動機術を扱うための超高出力の銃。これを必要とする程の魔動機術をアリスは扱えず、またシューターとしての技能が得物に追い付いていないため、アリスは戦闘に於いて箱では無くありふれた銃を扱う。
「いつか必ず聖剣に相応しい勇者になって、封印をアンロックしてみせます！」

今日は『渚の陽射し』というギルドで冒険者登ろくをして、そのまま初めての依頼を受けて冒険をしました。
ゴブリンをとう伐するだけの依頼でしたが、勇者アリスは敵がどれ程の相手だろうと気は抜きません。（得体の知れない影を見たというほう告があった事とは関係ありません！本当ですよ？）
それが功をそうし、ギルドで知り合った五人の仲間達と即席のパーティを組み、近くの森でゴブリンをとう伐した後、帰路の途中でボルグの群れにそうぐうしても即座に対応する事が出来ました。
ですがパーティメンバーであるシャードがすさまじい剣技で群れのリーダーであるボルグハイランダーをズバズバーッと切り倒してしまい、他のボルグもアリスが手を出すまでもなく片付いてしまいました。（後で聞いてみたところ、ミラージ流という流派の技らしいです！）
みんな実力派ばかりで、アリスもうかうかしていられません。
まずはシューターとして狙げき能力を高めたり、魔動機術の理解を深めたり、自己研さんに努める事にします。
そしてゆくゆくは、今日一緒に依頼を受けてくれたみんなを勇者のパーティにさそおうと思います。
このくやしさをバネにして、アリスはもっと​───────
【途中で疲れ果てて眠りについてしまったのか、文章が途切れて濡れたような汚れが付いている】