「おれみたいなオジサンに、あまり期待しないでほしいなぁ」
「やれやれ。どうやらまだ“譲れないもの”ってのがおじさんにも残ってたらしいよ……！」

村娘エスタの伯父。
一見してどこにでもいる温厚そうな中年男性、と言った感じ。
柔和な、悪く言えば締まりのない顔つきをして、エスタの仕事を手伝ったり手伝わなかったりしつつぶらぶらしている。

エスタが両親を亡くしたばかりで落ち込んでいた頃に偶然家を訪れ、それから居候している。
昼間から酒を飲んでいるなど、普段の生活ではだらしないところが目立ち、エスタに世話を焼かせていることが多い。
ただ、それは家族を失ったエスタの気を紛らわせるためにわざとだらしなくしている節がある。

村の出身者で、冒険者として名を挙げることを夢見て村を飛び出したらしい。
冒険者としてどう過ごしてきたのかを尋ねたとしても「大したことはしてないよ。たまたま死に損なってここに帰ってきただけさ」等とはぐらかす。

ドーデン地方のフィノア大草原の中で、マグノア草原国とキングスフォールの間くらいにある農村に生まれる。
牧畜を中心として行う農家の三男坊で、他の多くの兄弟とともに幼い頃は牛や羊の世話をして過ごしていた。
特に１つ上の姉とは仲が良かったが、他の兄弟とは歳が離れていたこともあってそこまで親密ではなかった。

そのまま同じような毎日の繰り返しに退屈しつつ、16歳になる頃、村にとある冒険者が訪れる。
後になって思えば、村の近くに現れた蛮族を討伐しにきただけの、そこそこの腕前の冒険者だったのだが、村の生活に飽き飽きしていた少年に、強い憧れを持たせるには十分だった。そこからスヴェンは2年かけて旅立ちの準備をし、18になると同時に村を出て冒険者となる。

幸いにして大きな失敗をすることもなく、数年の経験を積んでそこそこの戦士として成長した頃、とあるリカントの女冒険者がリーダーを務めるパーティに加入することになる。意気投合した彼らは、リーダーの発案でブルライト地方に移り、傭兵団を結成する。
狼の横顔を記章としていたその傭兵団で、リーダーの補佐役として多くの戦いに加わった。

そして月日は流れ、初めてリーダーとパーティを組んでから、10年にもなっただろうか。

リーダーの実力とカリスマ性により多くの仲間達を得た傭兵団は精鋭として有名になり、ミラージ共和連邦領のある街を拠点として広く活躍することとなっていた。

しかし、その活躍を危険視した蛮族により傭兵団は急襲され、拠点の街ごと壊滅させられてしまう。
別の任務で本隊から遠く離れていたスヴェンが拠点に戻った時には、そこには焼け野原となった街の跡しか残っていなかった。

それまで積み上げたもの、仲間達、自分の居場所、すべてを失った。
その事実から目を背けるように、彼は拠点とともに壊滅させられた街の復興に尽力し、同胞達の亡骸を集め、墓地を作って弔った。
一年以上の時をかけ、ようやく街の復興に目処がついた頃、彼は目を背け続けていた喪失感から、結局逃れられないことに気がついてしまった。
どれほど街がもとの姿を取り戻そうとも、そこに自分の仲間達は戻ってこないのだ。

彼は寂しげに微笑んでそこから立ち去った。
その行方は誰も知らない。

A 4-3 忘れられない恐怖を経験したことがある
→何をもっても埋まらない「喪失」を自覚する恐怖

B 6-4 特定の異種族を好んでいる（いた）
→かつての相棒で、上司で、友だった女リカントへの想い

C 3-5 決して手放せない小物がある
→所属していた傭兵部隊の意匠の軍師徽章

冒険に出た理由　3-6　最高の冒険者になるため
→かつて村を飛び出した時には、それを夢見ていた